Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年12月10日 No.3250  韓国の大学で「日本の農業」をテーマに講演 -21世紀政策研究所

梨花女子大学通訳翻訳大学院で講演する大泉研究主幹

21世紀政策研究所(榊原定征会長、三浦惺所長)の大泉一貫研究主幹(宮城大学特任教授)が11月16日から18日にかけて韓国を訪問し、崇実大学および梨花女子大学通訳翻訳大学院で「日本の農業の成長産業化」について講義を行った。

韓国の総合経済団体である全国経済人連合会(全経連)は、大学と提携し、産業界の実情、考え方などを伝えることを目的とした講座を設けており、今回の崇実大学での講義はその一環として行われた。同講座の責任者であるチョン・サムヒョン崇実大学法学部教授(サムソン証券理事会議長)によれば、韓国では農産物の国際的競争力強化が課題であり、日本が農業をどのように成長産業にしようとしているかに関心があるとのことであった。

同研究所では、大泉研究主幹を中心とした「新しい農業ビジネスを求めて」と題する研究会を設け、国内外の事例をもとに、わが国が目指すべき農業のビジネスモデルの内容、必要とされる施策や課題について検討を重ねている。

一方、梨花女子大学の通訳翻訳大学院とは、日韓関係の強化を図るため、今年度から同研究所の研究主幹等による講義をスタートさせており、その一環として大泉研究主幹が講義をした。

大泉研究主幹はまず、日本と韓国はいずれも稲作経営者が多いこと、農産物の輸出を十分に伸ばせていないことなど、共通した特徴があると説明。農業を成長産業にするためには、オランダやデンマークで行われている「成熟先進国型農業」をモデルとすべきであると述べた。

そのうえで、「成熟先進国型農業」は市場開拓や商品開発によって新たな価値創造に挑戦し続け、食品貿易の活性化を促しているため、生産性、農産物輸出力・競争力が高く、かつ付加価値の高い農産物の生産に特化した農業であり、このような農業を実現するためには農業部門が外食産業、食品製造業、卸売業のニーズを把握し、それを生産に反映するようなフードバリューチェーンを構築する必要がある旨指摘した。また、現在安倍政権では「攻めの農政」として、農業を成長産業とするために、こうしたフードバリューチェーンを構築するための取り組みなどを実施していることを紹介した。

質疑応答では、韓国の学生から、先日大筋合意がなされたTPP(環太平洋パートナーシップ協定)が締結された場合の日本農業への影響について質問が出され、これに対し大泉研究主幹は、TPPの大筋合意の内容、日本の農業の現状、最近の為替などから判断すると、「攻めの農政」を徹底していけば、TPPを締結しても、日本農業は十分対応していけるであろうと回答した。

日韓両国はともに、農産物の国際競争力の強化が課題となっており、今後、韓国においてどのようなかたちで取り組みがなされていくかを注目していく必要がある。

【21世紀政策研究所】