Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年3月17日 No.3262  災害時の実効性ある官民連携の構築について聞く -社会基盤強化委員会企画部会

吉井名誉教授

経団連の社会基盤強化委員会企画部会(伊東祐次部会長)は2月24日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、東京経済大学の吉井博明名誉教授から「災害時における実効性のある官民連携の構築」をテーマに説明を聞くとともに、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

(1)実効性のある災害対応に向けて

大規模災害が発生した場合、行政(公助)の能力を大幅に超える膨大な救援活動が必要となる。このため、災害に対する民間企業・団体や個人の自助・共助の力を強化し、政府・自治体による公助と適切に連携していくことが重要である。ただ、これは、災害対策のなかで最も難しい問題でもある。

(2)国・自治体の官民連携の取り組み

政府においては、東日本大震災を踏まえ、2014年3月に政府全体の事業継続計画(BCP)を作成し、政府の必須機能として(1)内閣機能(2)被災地への対応(3)金融・経済の安定(4)国民の生活基盤の維持(5)防衛および公共の安全(6)外交関係の処理――という6つの視点を明確にした。今後、この政府全体のBCPに基づき、各省庁のBCPが見直される予定である。

自治体においては、東日本大震災以降、官民協定の必要性に対する認識が高まり、14年時点で、都道府県平均で126件、市区町村平均で22件の官民協定が締結されている。また今後、約6割強の市区町村が官民協定の締結を進めたいという調査結果もある。

その一方で、都道府県のBCPの策定率は89%、市区町村では37%にとどまっている。特に、(1)優先業務の絞り込み(2)本庁舎が使用できない場合の代替庁舎の設定(3)非常用発電機の設置(4)燃料の備蓄(5)多様な情報通信システム等の整備――が進んでいない。

(3)官民連携強化のための方向性

災害時の官民連携を図るためには、まず、政府や省庁、自治体、企業の各々がBCPを策定することが前提条件である。その後、各主体のBCP等に基づき、効果的な災害対応に向け、できる限り具体的に官民協定を締結する必要がある。

また、官民連携の実効性向上に向け、官民が一体となって共同訓練を企画・実施することが求められる。

なお、制度面での官民連携の強化策として、被災者の生活環境の早期回復に向けて、これまでの現物支援を行う被災者救援制度から、フードクーポンや住宅バウチャーの配布など、市場メカニズムを活用した被災者救済制度への転換を図ることが望ましい。

<意見交換>

その後の意見交換では「衛星携帯電話以外に災害時に適した連絡手段はないか」との質問に対し、「米国や韓国をはじめ、諸外国で導入が進んでいる公共安全LTEの導入等が考えられ、これは、防災関係機関同士の相互通信手段としても有効である」との回答があった。

【政治・社会本部】