Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年3月31日 No.3264  内閣府統計委員会の最近の動向を聞く -経済財政委員会統計部会

経団連の経済財政委員会統計部会(野呂順一部会長)は9日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、内閣府大臣官房統計委員会担当室の伊藤由樹子室長から公的統計の改善を検討する統計委員会の最近の動きについて説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。

1.統計委員会の主な活動

現在の統計委員会の主な活動は3つある。

1つ目は、個別統計の変更にかかる審議であり、最近では、小売物価統計、工業統計、国民生活基礎調査等の変更にかかる審議を行った。2つ目は、「公的統計の整備に関する基本的な計画」のフォローアップであり、毎年、前年度の各府省の取り組み状況を審議している。3つ目は、これまで統計委員会に1度も諮問されたことがない基幹統計(未諮問基幹統計)の確認である。

2.統計技術的な視点からの改善

昨年11月、経済財政諮問会議は経済統計の改善に向けた問題提起を行い、統計委員会に対し、家計調査、毎月勤労統計調査、法人企業統計調査等の見直しとサンプルに関する横断的な課題について方針を整理するよう要請した。これを受け統計委員会は、未諮問基幹統計の確認のなかで、これらの課題を議論した。

家計調査については、諮問会議から昼間の在宅の可能性が高い高齢者などからの回答が多く、サンプルの分布の偏りが指摘された。このため、統計委員会は年齢階層を補正した数値を参考として提供するよう提案し、所管の総務省は2016年度から実施するとしている。

毎月勤労統計調査と法人企業統計調査については、諮問会議からサンプルを入れ替える際に断層が生じていると指摘された。統計委員会としては、毎月勤労統計調査について、30人以上の事業所のサンプルを2~3年に一度、一斉に入れ替える現在の方式を改め、毎年3分の1ずつ入れ替える方式へ移行すること、法人企業統計調査については、断層を調整した値を参考に提供することを各々提案している。

3.統計精度の向上を目指す今後の取り組みと留意点

政府においては、厳しい財政状況のなか、統計に充てる予算、人員は無尽蔵ではない。また、プライバシー意識の高まり、昼間の在宅の可能性が低い共働き世帯の増加、企業における間接部門の人員抑制などにより、統計調査をめぐる環境はますます悪化している。こうしたなか、公的統計の改善を図る観点から、従来の統計調査に加え、新たな情報源として行政記録情報やビッグデータ等の活用も今後検討していく。

統計は政府の政策決定、企業・国民の意思決定、学術研究の基礎資料として利用され、「経済実態を的確に映し出す鏡」としての役割が求められる。その「鏡」が曇ると、誤った意思決定につながるおそれがあるため、統計作成部局には、統計の精度を上げる努力が常に求められる。

一方、ユーザーの側にも統計をみる際には注意が求められる。サンプルの特徴や統計ごとの定義の違いなど各統計の特徴に留意する必要がある。

【経済政策本部】