Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年4月21日 No.3267  グリアOECD事務総長との懇談 -日本経済の見通しや成長に向けた政策課題など

発言するグリア事務総長

経団連の榊原定征会長は13日、東京・大手町の経団連会館でアンヘル・グリアOECD事務総長と会い、日本経済の見通しや成長に向けた政策課題等をめぐり意見交換を行った。それに先立つ12日には、経団連のOECD諮問委員会(斎藤勝利委員長)が同事務総長との懇談会を開催し、斎藤委員長ら約30名が参加した。
グリア事務総長の発言の概要は次のとおり。

■ 世界経済は緩やかに回復

世界経済は2016年に3%成長となる見通しで、世界的な金融・経済危機から8年が経った現在も危機前の4%成長に達していない。貿易の伸びは3%以下と低調で、投資は回復しているもののスピードが半減している。

この20年来、世界経済を牽引してきた新興国経済が目にみえて減速するなか、先進国のなかでは米国が2.2~2.4%成長と最も好調で、3%成長も視野に入っているが決してバラ色ではない。ユーロ圏は1.4~1.5%成長であり、債務問題を抱え投資は低調で失業率が高止まりしている。

英国のEU離脱問題(BREXIT)は同国のみならず欧州全体の問題であり、なんとしても英国のEU離脱を阻止したい。中国は16年6.5%、来年は6.2%成長の見込みで、鉄鋼、セメント、石炭、ガラス、化学、造船等の過剰設備が問題となっている。

■ 財政の安定に向けて日本は予定どおり消費増税の実施を

日本経済は16年には0.8%成長の見込みで、来年も同程度となる見込みである。日本の課題は、過去25年間、1人当たりGDPの伸びが平均0.8%とOECD平均を下回っていることで、債務はGDPの230%とOECD諸国ではみたこともない水準に達している。

高齢化も重大な問題であり、対処していくためには、(1)平均寿命に合わせた定年の見直しなど就労の長期化(2)子育て支援を含めた女性の活躍推進(3)移民政策の確立――の3点が重要である。

OECDはかねてより財政の安定の重要性を指摘してきた。消費税について、17年4月の増税はすでに決定されており、よほどの非常事態とならない限り公約として守るべきであり、さらに毎年1%ずつ上げて15%まで引き上げるべきだ。他方、日本の法人税率はいまだ引き下げの余地がある。

消費税率引き上げのマイナスの影響を補う意味で、インフラなど生産性向上に資するターゲットを絞ったプログラムを期間限定で実施すべきだ。投資が増え経済成長が実現し歳入増を図ったうえで、じっくり財政の持続可能性を検討することも可能であろう。景気が減速すると20年までのプライマリーバランス黒字化が困難になる。そうした事態に陥らないよう、歳入を安定化し債務の安定化を図るべきである。インフレ目標が達成され金利が上昇すると、債務の返済コストがかさみ管理不能になるおそれもある。

民間企業に十分な内部留保があるにもかかわらず健全な設備投資が伸びていないこと、また、人手不足、低失業率にもかかわらず賃金が十分に上がっていないことを懸念している。

【国際経済本部】