Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年8月11日 No.3282  2016年度宇宙開発利用推進委員会総会を開催 -奥村JAXA理事長が講演

講演する奥村JAXA理事長

経団連は7月25日、東京・大手町の経団連会館で宇宙開発利用推進委員会(下村節宏委員長)の2016年度総会を開催した。
総会では、15年度の活動報告および決算等、16年度の活動計画および収支予算が報告されるとともに、役員の改選案が承認された。続いて、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の奥村直樹理事長が「変わる宇宙開発―JAXAの新たな挑戦」と題して講演を行い、出席委員との間で意見交換を行った。
講演の概要は次のとおり。

■ 宇宙産業における環境変化

世界の宇宙産業の市場規模は飛躍的に拡大している。人工衛星保有国は1995年の28カ国から、16年には62カ国にまで増加した。米欧露の宇宙開発の投資額が大きいが、多くの新興国も投資を行っており、有望な市場といえよう。

一方、国内の宇宙産業の市場規模は横ばいだ。JAXAの予算総額も横ばいで、プロジェクトを振興する補正予算の割合が増えている。その結果、自由な研究開発のための予算は減少傾向にある。また、JAXAの予算規模は、NASA(米国航空宇宙局)の1割、ESA(欧州宇宙機関)の4割程度である。

■ 環境変化をとらえたJAXAの新たな取り組み

こうした状況のなか、JAXAでは競争的資金の獲得に取り組んでいる。例えば、相模原キャンパスに新たに設けた宇宙探査オープンイノベーションハブは、科学技術振興機構のイノベーションハブ構築支援事業(注1)に採択された。また、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)(注2)には、衛星を用いたインフラの維持管理・更新や、自動走行の実証にかかわる事業が採択されている。

また、宇宙で得た成果を実社会に還元する視点が重要だ。例えば、「衛星で観測した地盤の情報をもとに地滑りを予測できないか」「衛星の情報が、行政の意思決定に必要な情報にならないか」等が考えられる。

JAXAでは国際協力にも取り組んでいる。日本の人材育成業務は高い評価を得ているので、人材育成と宇宙機器の販売をパッケージ化すれば、さらなる競争力を確保できる。例えば、人工衛星だけでなく、衛星から得た情報を解析するための分析ソフトをあわせて、宇宙新興国に輸出できるのではないか。

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総会終了後には懇親会が開催され、宇宙開発利用推進委員会のメンバー、中谷元防衛大臣(当時)、国会議員、政府関係者、有識者など約130名が参加した。

(注1)イノベーションハブ構築支援事業=科学技術振興機構の資金と、他の国立研究開発法人の運営費交付金等による独自資金をマッチングさせ、研究開発成果の最大化を目指す取り組み

(注2)戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)=府省の枠や旧来の分野の枠を超えた科学技術イノベーションの実現に向け、政府の総合科学技術・イノベーション会議が主導するプログラム

【産業技術本部】