Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年9月15日 No.3285  東方経済フォーラムに朝田日本ロシア経済委員長が参加

日露ラウンドテーブルでスピーチを行う
朝田日本ロシア経済委員長

今年5月の日露首脳会談で安倍晋三首相からウラジーミル・プーチン大統領に「8項目(注)からなる協力プラン」が提示され、高い評価を得るなど、経済分野における二国間協力の促進に向けた機運が高まっている。こうしたなか、経団連の朝田照男日本ロシア経済委員長は2日から3日にかけてウラジオストクで開催された「東方経済フォーラム」に参加し、日露ビジネスラウンドテーブルで経団連を代表してスピーチを行った。

東方経済フォーラムは、ロシア極東開発を国家戦略の最重要課題の1つと位置づけるプーチン大統領の肝いりで昨年始まり、2回目の今年は、プーチン大統領、安倍首相、朴槿恵韓国大統領はじめ、56カ国から約3500名の政府・企業関係者、1100名のメディア関係者が参加した。他方、デニス・マントゥロフ産業・商業大臣やアレクサンドル・ガルシュカ極東発展大臣はじめ日露の関係者約350名が参加したラウンドテーブルにおける朝田委員長のスピーチの概要は次のとおり。

■ 「8項目」に対する評価

安倍首相が提示した「8項目」は、日露協力の新段階を切り拓き、二国間経済関係を発展・拡大させていく土台である。経団連では6月に訪モスクワミッションを派遣した際、政府閣僚や経済界首脳との建設的な意見交換を通じて、具体的なプロジェクトにつなげる素地を構築した。

特に日本企業が注視するのは、農業や水産加工、快適な都市づくりに向けた上下水道、廃棄物処理、医療分野等である。

日露官民が一丸となって「8項目」実現に動き出した今、経団連としても、年内のプーチン大統領の訪日に向けて、ロシア政府・経済界と政策対話を積み重ねながら、各種案件の実現に積極的に関与していく。

■ 日露経済関係の現状と課題

ルーブル安によりロシア産品の価格競争力は向上したものの、油価下落等の影響により、2015年度の日露貿易額は対前年比38.9%の大幅減となった。日本の対露直接投資は昨年、4.39億ドルへと3年ぶりに増加し(対前年比約62%増)、とりわけ非製造業分野への進出が顕著である。ロシア市場の成熟化や消費者の多様なニーズを反映しているといえよう。

12年のWTO加盟後、ロシアはビジネス環境の整備にたゆみない努力を重ねている一方、今もなお法制度や行政手続き、輸出入手続きが煩雑との指摘があることも事実である。改善に取り組んでもらうよう、この機会にあらためて要望したい。

■ 極東投資誘致策への期待や要望

経団連のアンケートによれば、回答企業の半分以上が「極東は有望」としており、日本企業の極東地域への関心は着実に伸びている。経済特区の効果を最大限発揮するため、簡易ビザ制度の速やかな導入やインフラ整備の推進、特区入居時の円滑な行政手続きなどに取り組んでほしい。

「8項目」の重要な柱をなす極東開発の成否は、日露経済関係全体の行方を左右する試金石である。ロシア政府には、投資家目線で「投資に見合ったリターン」が担保されるシステムの整備等を推進してほしい。

(注)(1)健康寿命の伸長(2)快適・清潔で住みやすく活動しやすい都市づくり(3)中小企業交流・協力の抜本的拡大(4)エネルギー(5)ロシアの産業多様化・生産性向上(6)極東の産業振興・輸出基地化(7)先端技術協力(8)人的交流の抜本的拡大

【国際経済本部】