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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年10月13日 No.3288 温暖化対策における「長期戦略」 -電力中央研究所の杉山上席研究員と意見交換/地球温暖化対策ワーキング・グループ、国際環境戦略ワーキング・グループ

昨年末のCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で採択された「パリ協定」は、今世紀中ごろを念頭に置いた長期の温暖化対策(長期戦略)の策定・提出を各国に招請しており、わが国でも長期の温室効果ガス削減のあり方に関する議論が行われている。
そこで、経団連の環境安全委員会地球環境部会の地球温暖化対策ワーキング・グループ(村上仁一座長)と国際環境戦略ワーキング・グループ(手塚宏之座長)は9月7日、東京・大手町の経団連会館で合同会合を開催し、電力中央研究所の杉山大志上席研究員から、「温暖化対策における『長期戦略』」をテーマに説明を聞くとともに、意見交換を行った。
杉山上席研究員の説明の概要は次のとおり。

■ 長期戦略をめぐる各国の動向

長期戦略の検討は、英国・ドイツ・フランスが先行しており、米国は年内の発表が見込まれている。これらの国では、2050年に8割程度の温室効果ガスの削減を法律あるいは国家レベルで定めている。日本でも、今年5月に閣議決定された「地球温暖化対策計画」のなかで、経済成長と両立させながら等の条件を付しつつも「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」との数値目標が記載された。

■ 地球規模・長期の排出削減の考え方

2050年といった不確実性の大きい将来について、責任を伴う目標を具体化することは不可能である。日本はすでに2030年度の中期目標(13年度比26%削減)を国連に登録している。2030年以降の長期の温室効果ガスの削減については、個別分野の目標設定はなじまず、パリ協定に基づき、削減目標を5年ごとに更新していく漸進的なアプローチを取るべきである。

EUをはじめとするいくつかの先進国は、排出抑制に向けた規制的手法を導入したことで、この15年間に国内での排出量を大きく減らしたとされている。しかし、これは製造業の生産拠点の海外移転などにより、生産ベースでの排出が減った結果にすぎない。中国など海外からの輸入品を含めた消費ベースでみれば、排出量はこの間ほとんど減っていない。

経済成長と両立させつつ、長期かつ地球規模の温暖化対策を進める観点からは、イノベーションを起こす環境整備に注力すべきである

■ イノベーションを起こすには

人工知能等のこれまでの技術的なブレークスルーは、異なる分野における既存の技術を組み合わせることによって実現してきた。温暖化分野でのイノベーションについても、温暖化対策を直接の目的としない、幅広い分野における技術全般が進歩することによって実現すると予想される。

現在、わが国政府は、今年4月に策定した「エネルギー環境イノベーション戦略」をはじめ、「第5期科学技術基本計画」などさまざまなイノベーション政策を推進している。政府は、こうしたさまざまなイノベーション政策の成果を総合化したうえで、将来像を描いていくべきである。

<意見交換>

その後の意見交換では、出席した委員から「人工知能のようなイノベーションが日本ではなく、米国で起きているのはなぜか」「エネルギーの供給側にイノベーションの余地はあるのか」といった問題提起がなされ、活発な議論が行われた。

【環境エネルギー本部】

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