Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年11月10日 No.3292  日米経済関係の現状と今後の展望 -コロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所と懇談/アメリカ委員会

経団連のアメリカ委員会(石原邦夫委員長、村瀬治男委員長)は10月28日、東京・大手町の経団連会館で、コロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所(CJEB)のヒュー・パトリック所長(コロンビア大学ビジネススクールR.D.カルキンス国際ビジネス名誉教授)と伊藤隆敏研究副部長(同大学国際公共政策大学院教授)との懇談会を開催した。パトリック所長から米国大統領選挙と日米経済関係の見通しについて、伊藤研究副部長から日本経済の現状分析についてそれぞれ説明を聞き、意見交換を行った。両教授の説明の概要は次のとおり。

■ 米国大統領選挙と日米経済関係の見通し=パトリック所長

パトリック氏

ドナルド・トランプ共和党公認候補が当選すれば、前代未聞の事態になるだろうが、現時点ではそのような結果になることは心配していない。ヒラリー・クリントン民主党公認候補が次期大統領となれば、日米安全保障条約や日米の同盟はさらに強くなるだろう。彼女は影響力のある人材を登用して、貿易関係の改善にも努めるだろう。米国のGDP成長率は今後も2%以上になると予測するが、新政権は米国経済やその成長のなかで取り残された人々を救済すべきだ。

中国の軍事力と経済力の脅威もあり、対中国の観点からは日米関係は今まで以上に重要になるだろう。日米経済協力関係は共通の価値や市場の機能に根ざすのみならず、多くの機会と同時にさまざまな課題のうえに成り立っている。

■ 日本経済の現状分析=伊藤研究副部長

伊藤氏

学者からみれば、日本の実体経済の数値は悪くなく、インフレ率が向上しないのは非整合的で、腑に落ちないと感じている。日本銀行が今年9月に導入した新たな金融政策の枠組みはさらに強力な緩和を約束するもので、重要な意味を持つだろう。しかし、中長期的にみれば、金融・財政政策は総需要を刺激するものである。現在問題となっている実質賃金の引き上げや潜在成長率の引き上げには生産性の向上が不可欠であり、アベノミクスの第3の矢である成長戦略の再構築が必要である。

労働力の不足については女性、高齢者、外国人などの労働参加率を向上させる必要があるだろう。

日本の一般政府債務GDP比は世界最悪の水準にあるが、日本の国債は国内の金融機関の預貯金が95%を支えていることや消費税の増税余地があることから、有識者のなかでも財政再建の緊急性については意見が分かれている。

■ 日米経済関係強化に向けた経団連の役割

パトリック所長は経団連の役割について、「日本企業の米国における貢献の実態に関する発信にとどまらず、より包括的に日本経済および日本企業のビジネスの構造や、それらが米国や他国に対して与える影響や恩恵について、さらに発信し続けるべきだ」と提案した。

【国際経済本部】