Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年12月1日 No.3295  産業保安のスマート化に向けた政府や産業界の取り組みを聞く -環境安全委員会安全部会

経団連は11月10日、東京・大手町の経団連会館で環境安全委員会安全部会(武藤潤部会長)を開催し、経済産業省の住田孝之商務流通保安審議官から、IoT(Internet of Things)やビッグデータ等を活用した産業保安のスマート化に向けた政府の取り組みについて説明を聞いた。

あわせて、アズビルのアドバンスオートメーションカンパニーSSマーケティング部第2グループの高井努マネジャー、日本IBMコグニティブソリューション事業クロスインダストリーソリューションズ事業部の大高諭事業部長から各社の取り組みを聞いた。

説明の概要は次のとおり。

■ 産業保安のスマート化に向けた政府の取り組み(経済産業省)

経済産業省は、プラントの老朽化やベテラン従業員の引退等による重大事故リスクへの備え、サプライチェーン全体の高度化への対応として、IoTやビッグデータ等の活用によって現場の自主保安力を高めていく取り組み(産業保安のスマート化)を進めている。

具体的には次の3点の方針に基づき、現在産業保安法令の見直しを進めている。

  1. IoTやビッグデータ、AI(人工知能)を活用した高度な自主保安を行う事業者に対する、規制上のポジティブインセンティブの導入
  2. 「仕様規定」の「性能規定化」や民間・海外規格の導入による事業者のイノベーションの促進
  3. リスクの程度に応じた規制体系の再構築によるコストの合理化

このほか、金融機関と連携し、優良事業所を評価する保険商品の開発やIoT等の活用状況に応じた格付け・融資制度の整備を図ることで、事業者のスマート化投資の促進に取り組んでいる。

また、今年10月に都内で起きた大規模停電は、老朽化した地中送電ケーブルの故障が原因である。IoTの活用により、設備の老朽化をセンシングして故障リスクを予測したり、トラブル発生箇所で何が起きているかを「見える化」したりすることで、現場の判断を支援できる。

■ 企業の事例紹介(アズビル、日本IBM)

続く事例紹介では、アズビルの高井氏が、「スマート保安のためのIoT技術活用」について説明。このなかで「プラントの安全や生産に関する知識に加えて、データ分析や管理ができる『データエンジニア』の存在が重要」と述べた。

日本IBMの大高氏は、「ビッグデータ時代のソリューションプラットフォーム」と題し、従来のセンサー・データに加えて、映像や自然言語なども認識・学習するコンピューティングの将来性を説明した。

<意見交換>

委員から、現場でのデータサイエンティストの確保や、既存プラントに最先端技術を導入して使いこなすことの難しさ等について指摘があった。他方、武藤部会長からは、「保安のスマート化は必要。最先端技術のみならず、各工場にあった技術を使いこなしていくことが重要」との指摘も出た。

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このほか、2016年度の安全保安分野における規制改革要望に関する審議が行われた。

【環境エネルギー本部】