Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年1月12日 No.3299  第5回審議員会を開催

経団連は12月26日、東京・大手町の経団連会館で第5回審議員会を開催した。来賓として安倍晋三総理大臣、麻生太郎副総理・財務大臣、石原信晃内閣府特命担当大臣、岸田文雄外務大臣、世耕弘成経済産業大臣が出席するとともに、黒田東彦日本銀行総裁が講演した。

安倍首相があいさつ

あいさつする安倍首相

あいさつした安倍首相は、「2016年後半から世界経済は全体として上向きつつあり、これを受けて日本経済にも明るい兆しがみえる」としたうえで、アベノミクスはまだ道半ばとの認識を示し、「デフレ脱却を確かなものとし、経済をしっかり成長させる」との決意を表明。経済界に対しては、「働き方改革」の実現や経済の好循環を回していく観点から賃金引き上げに向けた積極的な対応を求めた。

岩沙弘道審議員会議長は、わが国経済は緩やかだが回復の基調をたどっているとの認識を示したうえで、17年は国民の将来不安を払拭し、個人消費の拡大や企業の積極的な設備投資へとつなげ、経済の好循環を生み出すための正念場と指摘。経団連の取り組むべき課題としてSociety 5.0の積極的な推進、経済外交の推進、働き方・休み方改革、地域経済活性化、震災復興を挙げた。

続いてあいさつした榊原定征会長は、世界経済の発展には自由で開かれた国際経済秩序が不可欠であり、世界で台頭しつつあるナショナリズムや保護主義の流れを断ち切っていく必要があると指摘。各国の経済団体との連携を強化し、自由で開かれた貿易・投資の意義を各国政府に強く訴えていくと述べた。そのうえで、最優先課題はデフレ脱却と経済再生を確実に実現し、GDP600兆円経済への確固たる道筋をつけることであるとして、景気回復の足取りを確実なものとするため、政府の「日本再興戦略2016」に盛り込まれた「官民戦略プロジェクト10」、具体的にはSociety 5.0の実現や消費マインドの喚起をはじめとする10のプロジェクトに取り組む決意を示した。

「世界経済の新たなフェーズと日本経済の課題」
黒田日銀総裁講演

講演する黒田日銀総裁

黒田東彦日本銀行総裁の講演の概要は次のとおり。

2016年は、国際金融市場の不安定な動きや世界経済の不確実性の高まりが意識され、先行きへの悲観的な見方が広がった一年であった。もっとも、客観的にみれば世界経済はグローバル金融危機(リーマン・ショック)後の調整局面をようやく脱し、新たなフェーズに入りつつあるようにうかがえる。最近は新興国で成長モメンタムのピックアップがみられるほか、先進国でもこれまで家計部門中心だった景気回復が企業部門にも広がりつつある。グローバルな需要の回復を受けてコモディティー価格も底入れし、上昇に転じている。

日本経済をみると、グローバル金融危機後、得意分野である資本財の需要低迷、過度の円高進行など、世界のなかでも特に不利な状況に置かれていたが、強力な金融緩和を推進してきた結果、この3年半あまりでわが国の経済情勢は大きく好転した。物価面でも、「物価が持続的に下落する」という意味でのデフレではなくなった。最近の経済指標をみると、個人消費の持ち直しを示唆する指標が増えているほか、輸出や生産も増加するなど、足もとの経済には改善の動きが広がっている。

日本経済はこれまではいわばグローバル経済の「逆風」のなかで奮闘してきたが、世界経済が新たなフェーズに入るなかで、これからは「追い風」を受けてさらに前進していくことが可能な状況になってきている。今後の日本経済の成長にとっては、企業がさまざまなレベルで創造的な力を発揮し、主体的に需要の掘り起こしを行うこと、また、マクロ経済政策面で企業がグローバルな「追い風」を最大限活かせるような経済環境をつくり出すことが重要である。この点で、日本銀行は経済や物価を押し上げる「追い風」の効果をさらに強める働きを持つ、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入している。

2017年は、日本経済がデフレ脱却に向けて大きく歩みを進める年になる。企業の前向きな取り組みにより、その歩みが確実なものとなることを期待している。

※全文は日本銀行ホームページに掲載
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/ko161226a.htm

【総務本部】