Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年2月16日 No.3304  提言「Society 5.0に向けた電子政府の構築を求める」を公表 -10項目の施策を提言

経団連は14日、提言「Society 5.0に向けた電子政府の構築を求める」を公表した。Society 5.0に向け、社会全体のデジタル化が急速に進むなか、現状では行政分野がボトルネックとなり、国全体の生産性向上を阻害している。同提言は、こうした問題意識のもと、行政改革の観点から電子政府の構築を求めるもの。

■ 電子化を梃子に事業者負担の削減を

これまでの電子政府の構築に向けた取り組みとして、2012年に設置された内閣情報通信政策監(政府CIO)のもと、行政情報システム改革の推進(システム数の削減・統合や運用コストの引き下げ等)やマイナンバー制度の導入が実現したことは、大いに評価できる。

一方で、申請・届出等のオンライン化は進んだものの利用率が低調な分野がみられるほか、内閣府と経団連の共同調査では、規制・行政手続きの煩雑さに起因する負担感が指摘されるなど、事業者のコスト増や事業展開のスピード低下といった問題の解決には至っていない。

こうしたなか、マイナンバー制度の開始(16年1月)や、行政手続きにおける紙から電子への原則転換を盛り込んだ「官民データ活用推進基本法」の公布・施行(16年12月)、行政機関間等での情報連携を行う仕組みである「情報提供ネットワークシステム」の運用(17年夏ごろ予定)など、本格的に電子政府の構築に取り組むための要件が整いつつある。

■ マイナンバー制度の積極活用

政府においては、電子政府の基盤としてマイナンバー制度を積極的に活用するとともに、(1)本質的なBPR(Business Process Re-engineering)が不十分(2)各省ごとの取り組みによる全体最適の欠如(3)国と地方の連携不足(4)電子政府の専門人材不足(5)ユーザビリティ・アクセシビリティ(注)の視点の不足(6)技術革新を踏まえた規制改革の実績不足――といった直面する6つの課題に取り組むことが求められる。

■ 電子政府構築に必要な施策(10の提言)

電子政府の構築に向けて、「トップダウンの体制整備」「マイナンバー制度の積極活用」「国・地方自治体の一体改革」「世界を先導する電子政府の実現」の4分類、合わせて10項目を提言する(図表参照)。とりわけ、総理(官邸)のリーダーシップのもと、戦略の立案・実行体制を強化したうえで、BPRや電子化の原則を法的に位置づけて取り組みを進めることが重要である。

電子政府構築に必要な施策(10の提言)

また、マイナンバー制度については、利用範囲が税・社会保険・災害対策にかかる事務に限定されているほか、事業者が特定個人情報を扱うにあたり厳格な安全管理措置を講じることが求められるなど、国民が制度の効果を実感しにくい状況にある。そのため、国民生活の質的向上の観点から見直しを求める。

このほか、世界基準の電子政府を構築する観点から、先進国家による国際連携への参画や、中小企業を含む民間へのビジネス機会の提供、国民の支持や参加につながるわかりやすい政府広報等に取り組むことも重要である。

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経団連では、提言の実現に向け、政府への働きかけを行っていく。

(注)ユーザビリティ・アクセシビリティ=すべての国民にとっての使いやすさ

【産業政策本部】