Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年2月16日 No.3304  連合との懇談会を開催 -今年の春季労使交渉における諸問題について意見を交換

榊原会長

神津連合会長

経団連は2日、東京・大手町の経団連会館で連合(神津里季生会長)と懇談会を開催し、今年の春季労使交渉をめぐる諸問題をテーマに、賃金引き上げや働き方改革などについて意見交換した。

冒頭のあいさつで経団連の榊原定征会長は、デフレ脱却と経済再生の実現に向けて、「官民戦略プロジェクト10」を着実に実行することが不可欠であり、特に「Society 5.0」と「消費喚起プロジェクト」に取り組む必要があるとの考えを示した。賃金については、3年間続いた賃金引き上げのモメンタムを今年も継続していくとの強い意向を表明するとともに、「長時間労働の是正」と「同一労働同一賃金の実現」の2つを柱として、働き方改革に向けた議論を深めていきたいと語った。一方、連合の神津会長は、基本的な認識は労使で共有できているとしたうえで、社会全体の波及効果と消費購買力の底上げを担保するためにも月例賃金の引き上げを継続することが重要との考えを強調した。

両会長のあいさつの後、連合側が「2017春季生活闘争方針」のポイントを説明。「人への投資」と「月例賃金の引き上げ」の重要性を訴えるとともに、取引慣行の適正化に向けた対応に注力していく必要があると語った。

一方、経団連側からは、「2017年版経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)」に基づき、経営側の基本スタンスを説明した。このなかで、賃金はさまざまな考慮要素を勘案しつつ、適切な総額人件費管理のもと、自社の支払い能力に基づき決定するとの大原則を踏まえながら、収益が拡大した企業や、中期的なトレンドとして収益体質が改善している企業に対して、「年収ベースの賃金引き上げ」の前向きな検討を呼びかけたことを紹介。検討にあたっては、自社の実情に適した方法を見いだすことが重要であることを強調した。

続いて行われた意見交換では、連合側から「中小企業が今後も健全に存続して日本の経済基盤を支えるためには公正取引の確立とあわせて、賃金引き上げと労働条件の改善・向上が喫緊の課題である」との見解が示された。長時間労働の是正に関しては、現場に適した対応が大事であり、経営トップをはじめとする社内の意識改革に加え、現場のマネジメント向上策や商慣行・サービスのあり方についても労使で検討すべきなどの意見が出された。

経団連側からは、賃金のみならず、わが国が抱えるさまざまな課題について、多くの点で労使の問題意識は共通しているほか、デフレからの脱却には、将来不安を払拭するとともに、民間部門の需要を創造して消費を喚起することが極めて重要だとの発言が複数の出席者からあった。また、(1)働き方改革に向けた一層の取り組みの推進(2)若年社員の早期離職への対応の必要性(3)消費拡大とワーク・ライフ・バランス改善策としての「プレミアムフライデー」への期待――などについて言及があった。

閉会あいさつにおいて、連合の神津会長は、労使交渉・協議や働き方改革への議論を通じて、労使で課題認識をさらに共有することが非常に重要であり、本日は有益な懇談となったと総括。榊原会長も、多くの重要課題について認識が一致していると述べたうえで、これから本格化する今次労使交渉において、自社の実情にかなった最適解を見いだしてほしいとの期待感を表明して会合を締めくくった。

【労働政策本部】