Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年3月30日 No.3310  LGBTを取り巻く環境と企業の対応について聞く -女性の活躍推進委員会企画部会

説明する松中氏

経団連の女性の活躍推進委員会(伊藤一郎委員長、吉田晴乃委員長)は、ダイバーシティ推進における課題の1つである「LGBT」(性的マイノリティー)に関する企業の取り組みについて、検討を行うこととしている。10日、東京・大手町の経団連会館で同委員会企画部会(中川順子部会長)を開催し、有識者ヒアリングとして、認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表の松中権氏(電通勤務)から、「はじめてのLGBT」と題して説明を聞くとともに、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ LGBTとは

LGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字を取った、性的マイノリティーを表す総称の1つである。ある調査によれば、LGBTは日本人の約7.6%を占め、これは左利きの人や、血液型がAB型の人、日本の全人口に占める神奈川県民の割合とほぼ同じである。それだけLGBTが存在するのだから、企業が活動するうえで、その存在を認識することは重要である。

また、LGBTは、3つのセクシュアリティー、つまり、カラダの性(身体的性)・ココロの性(性自認)・スキになる性(性的指向)の掛け合わせで分類でき、これにアピールする性(性表現)を加えることもある。

障害者や外国人などと異なり、LGBTは当事者が自らカミングアウトしなければ周囲から認識されない。みえないマイノリティーを「身近な存在」として周囲が進んで理解するとともに、「多様な存在」として社会が受容していく必要がある。

■ LGBTを取り巻く環境

米国では2015年6月、連邦最高裁判所の判決によって同性結婚が事実上認められるなど、LGBTの受容に向けたさまざまな動きがある。また、国連では、11年6月にLGBTの人権に関する初の国連決議が行われ、オリンピック憲章においても、15年に人種や肌の色等と並んで性別や性的指向による差別の禁止が明記された。他方、アフリカやイスラム圏等を中心に、同性愛が死刑となる国が6カ国以上、有罪となる国が75カ国以上もある。ロシアで14年のソチ・オリンピック直前に「同性愛宣伝禁止法」が成立し、各国の非難を受けたことは記憶に新しい。

日本では、少しずつ動きがみられ、行政による対応も始まった。企業各社が個性的・先進的な取り組みを進めるなか、国レベルでの取り組みも必要であるとして、先日、超党派の議員を招いた「レインボー国会」(院内集会)が開催された。行政と企業とが互いによい影響を与え合い、取り組みがさらに進むことが期待される。

■ 企業とLGBTの接点

企業とLGBTの接点は、大きく分けて2つ存在する。それは、従業員とのつながりと消費者とのつながりである。LGBTへのサポートが進んでいない企業は、先進的な取り組みを進める企業にLGBT当事者である優秀な人材を奪われてしまいかねない。また、当事者でなくとも、マイノリティーへのサポートを推進している企業には、女性にフレンドリーな企業と同様、魅力を感じる人は多いだろう。

消費の観点では昨今、「LGBTを応援する消費」が注目される。多様性の尊重をメッセージとして込めた商品の販売や、同性パートナーの存在を前提とした商品・広告を日本でも目にするようになり始めた。

◇◇◇

その後の意見交換では、企業がLGBTについての理解を深めるとともにそれを社外に広めていくための方策等について、各社の具体的な事例をもとに活発な議論が行われた。

【政治・社会本部】