Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年4月6日 No.3311  OECD・BIACの活動に関する懇談会開催

経団連は3月17日、都内でOECD・BIAC(Business and Industry Advisory Committee to the OECD)の活動に関する懇談会(座長=櫻田謙悟OECD諮問委員長)を開催し、外務省の山野内勘二経済局長から、ベター・グローバリゼーションに向けたOECDの役割と日本政府の取り組みについて説明を聞くとともに、BIACの最近の活動について日本代表委員から報告を聞いた。会合の概要は次のとおり。

■ 山野内局長説明

英国のEU離脱や米国大統領選挙など、昨年来のポピュリズム的な一連の出来事は、格差拡大や自由貿易に対する一般市民の不満の表れである。今後も引き続き、反グローバル化・保護主義的な傾向の高まりが懸念されるなか、包摂的なグローバリゼーションの実現や自由で開かれた国際秩序の維持に向けて、OECDの果たす役割は極めて大きい。

OECDは加盟国の経済成長、開発途上国に対する政策、自由かつ多角的な貿易の拡大を主な目的として活動してきた。1961年の発足から冷戦終結までは、世界経済の大部分がOECD加盟国であり、2000年まで世界のGDPの8割を占めていたが、その割合はいまや6割程度に低下している。これはOECDの推進する自由かつ多角的な貿易が途上国の経済成長を促した結果でもあり、OECDの成果といえる。他方、自由貿易のもたらす恩恵が日常生活に浸透し、認識されにくくなっているので、OECDにはその重要性や意義を人々があらためて実感できるよう、わかりやすく説明することが求められている。

また、G20の誕生など新興国の台頭やOECD加盟国の増加に伴い、OECDのグローバルガバナンスにおける役割が変化している。例えば鉄鋼や造船分野における過剰供給能力問題に関しては、OECDが中心となり、中国をはじめ非加盟国をも巻き込んだ議論を行っている。また、35の加盟国の間で意思決定を行うのは容易ではなく、今後、加盟国の増加等に関しては、戦略的に考えていく必要がある。加盟候補国の選定基準を整備するとともに、世界経済の成長センターであり、これまでOECD加盟国が日韓の二カ国にとどまるアジアへのアウトリーチを重視すべきである。

日本はOECD加盟国のなかで米国に次ぐ第2位の拠出国であり、OECD予算の約1割を占めているが、日本人職員の割合は全体の5%に満たない。中長期的には拠出金の割合と同程度まで増やしたいと考えており、政府職員だけでなく民間セクターの優秀な人材を派遣したく、協力をお願いしたい。

■ 意見交換

経団連側出席者から、地球温暖化問題等に関し、引き続きOECDならではの現実的で精緻な議論を展開してほしいとのコメントがあった。ASEAN諸国へのアウトリーチに関する質問に対し山野内局長は、グリア事務総長もアジアを重視しており、日本政府としてOECDとアジアの関係強化を全面的にサポートしていくと述べた。中国やロシアとの間でいかにレベルプレイングフィールドを確保していくかとの質問には、日米同盟を強化しつつ近隣諸国との適切な二国間関係を構築し、グローバルなルール・メーキングに積極的に関与していくことが重要だとの見解が示された。

■ BIAC活動報告

庄野文章BIAC化学物質委員会副委員長から、最近の化学物質委員会における主な論点として、動物実験に替わるコンピューターを活用したリスク評価手法の開発、海洋プラスチック問題等について説明があった。横澤誠BIACデジタル経済政策委員会副委員長からは、自由な情報流通の実現に向けて、データローカライゼーション、ソースコード開示要求等への対応が急務との説明があった。また、原伸一BIAC経済政策委員会副委員長から、従来からの一貫したテーマのうち、最近は構造改革、とりわけ人材の多様化や労働市場の活性化が注目されていることが紹介された。

【国際経済本部】