Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年5月18日 No.3315  諸外国との円滑な個人情報の越境流通の確保に向けた取り組み聞く -情報通信委員会企画部会

5月30日に施行される改正個人情報保護法では、外国にある第三者への個人データの提供を制限する規定が新設された。当該法を所管する個人情報保護委員会(PPC)が認定した国に所在する第三者はその限りではなく、諸外国においても類似の法制度が存在するケースがある。例えば、2018年5月からEU域内において適用されるEU一般データ保護規則(GDPR)等が該当する。PPCでは、こうした法制度がビジネスの阻害要因とならないよう、円滑な個人情報の越境流通を可能とする枠組み構築に向けた対話を諸外国との間で進めている。

そこで経団連は4月17日、東京・大手町の経団連会館で情報通信委員会企画部会(武山芳夫部会長)を開催し、PPCの其田真理事務局長から諸外国との対話の状況について説明を聞いた。概要は次のとおり。

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PPCでは個人情報の保護ならびにその円滑な越境流通を図るため、各国と協力対話を進めている。今回は米国・EU・英国との対話の状況について説明する。

まず、米国に関してはAPEC―越境個人情報保護ルール(CBPR)を推進していくことで米商務省と協力体制が構築されている。CBPRについてはEUの関心も高いとみられ、2017年1月に欧州委員会が発表した政策文書において、APECとの連携の重要性を指摘する記述がある。EUとの対話の足がかりとするうえでもCBPRの普及を進めることが重要だと考えている。

EUに関しては、互いに類似した制度があり、どちらか一方向にのみ越境移転を認めるのではなく、相互に流通を図るための枠組みが必要と考えている。これまで互いの法制度についての理解を深めるため、累次にわたり欧州委員会司法総局と協力対話を進めてきた。また、PPC委員と欧州委員との対話も実施している。対話のなかでは改正個人情報保護法だけではなく、関連する法律や背景にある日本の企業風土等を含めて話をしており、一定の理解を得られてきたと考えている。3月に司法総局と共催したセミナーでも、日本とEUの法律を1対1で対応させる必要はないといった日本の法律への理解を示す見解が示された。

今般EUからの離脱を発表した英国に関しては、離脱まではEUとの取り決めが適用されるが、離脱後は日英間で別の枠組みが必要になる。英国では、個人情報の取扱者を監視・監督する機能と法律を所管する機能を別々の機関が持っているため、それぞれの機関と対話を行ってきているが、これまでの対話で、2つの機関の間で一定の連携は取れていると感じている。

今後も各国との対話を進めるなかで、日本の産業界としての懸念や意見をPPCに寄せてほしい。

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説明を受け、参加企業からはDPO(データ・プロテクション・オフィサー、個人情報保護責任者)の設置をはじめとするGDPRの運用面や英国離脱の影響に対する懸念等が寄せられた。また、武山部会長は経団連は Society 5.0 の実現のカギとしてデータの利活用を重視しており、法律が阻害要因とならずにデータが円滑に流通し、活用される社会になっていくことが望ましいとの意見を述べた。

【産業技術本部】