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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年5月25日 No.3316 「子育て世帯の消費動向」について聞く -ニッセイ基礎研究所の久我主任研究員から/経済財政委員会経済政策部会

経団連の経済財政委員会経済政策部会(橋本法知部会長)は4月27日、3回目となる有識者ヒアリングを行った。ニッセイ基礎研究所の久我尚子主任研究員から子育て世帯の消費動向に関わる説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。

■ 子育て世帯の消費喚起の意義

子育て世帯は、家族形成に際し、多様な消費支出を行う。このため、現役世代の経済基盤の安定化、働き方の見直しが消費の持続的拡大に資する。最近では、夫婦共働きで同等の賃金を得る「パワーカップル」の消費が注目されている。

他方、世帯収入の減少が続き、例えば食材費の高騰に対処するため、1日数十円の節約に必死に取り組む世帯も存在し、二極化が進んでいる。その背景として現役世代全般では、男性は若年層ほど非正規雇用者の割合が高いこと、また、大学・大学院卒の正規雇用者でも、男女ともに30~40代の賃金の伸びが鈍化していることがある。

夫の収入の低下、女性の社会進出に伴う価値観の変容を背景として、2002年から共働き世帯が専業主婦世帯を上回り、未就学児を持つ母親の半数が就業している。2000年と比較して、世帯収入は共働き世帯、専業主婦世帯ともに減少し、税・社会保険料の負担増とあわせて、可処分所得は収入の減少分以上に減っている。また、消費支出の実額も減少している。他方、預貯金の毎月の純増分は、雇用や社会保障制度への不安のためか微増している。

■ 子育て世帯の消費の特徴

2000年と比べると、交通・通信、教育、食料への支出が増えている。交通・通信の伸びには、通信ニーズの高まりや、育児に参画する父親もターゲットとした電動アシスト自転車の普及も一役買っている。

他方、低下しているのは、住居、被服・履物、教養娯楽などである。住居については持ち家率が上昇している。住宅ローン減税の拡充や結婚・子育て資金の贈与税非課税措置の創設も寄与しており、ニーズの高いものに対して税制上の施策が行われれば、消費喚起に結びつく可能性がある。また、被服・履物については、低価格で衣服をそろえることのできるファストファッションなどが台頭しており、今の母親のファッション意識自体は薄れていない。さらに、共働き世帯の教養娯楽のうち、パック旅行の費用はLCCや格安航空券の普及により、直近上向きの兆しを見せている。

■ 「パワーカップル」による消費の可能性

共働き世帯の教育費は、専業主婦世帯を年間約14万円上回っている。いわゆる「お受験」のための学習塾や、民間の学童保育をはじめとした教育市場が活性化している。

今後、パワーカップルによる消費拡大が期待されるのは、ロボット掃除機やフードプロセッサーをはじめとした時短家電用品である。また、掃除や洗濯といった家事代行サービスの拡大も期待される。一層の普及に向けて、家事代行サービスへの支出額の課税所得からの控除といった税制優遇や、子育てクーポンの配布などが一案である。

■ まずは出産後も女性が働き続けることのできる環境整備を

現在の課題は、年齢が若いほど出産後の就業継続の難しい非正規雇用者が増えていることに加え、正規雇用者でも出産後の就業継続率は低いことである。加えて、妻に家事・育児の負担が偏り、保育所の不足や配偶者控除の仕組みも就労継続の足かせとなっている。

企業においても、出産・育児によりキャリアのブランクが生じた場合、高い人事評価を得にくいという現実もある。出産後も働き続けることが可能な環境整備が不可欠である。こうした取り組みにより、共働き・子育て世帯の消費拡大が一層進み、個人消費の底上げに結びつくことが期待される。

【経済政策本部】

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