Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年7月20日 No.3324  2017年度宇宙開発利用推進委員会総会を開催 -ドイツ航空宇宙センターのグルッペ理事が講演

説明するグルッペ氏

経団連は7月4日、東京・大手町の経団連会館で宇宙開発利用推進委員会(下村節宏委員長)の2017年度総会を開催した。
総会では、2016年度の活動報告および決算等、2017年度の活動計画および収支予算が報告された。

続いて、ドイツ航空宇宙センター(DLR)のゲルッド・グルッペ理事からドイツの航空宇宙産業についての説明を聞くとともに意見交換を行った。
グルッペ理事は2013年から毎年、訪日の際に経団連を訪問。今年4月には下村委員長がDLRを訪問するなど、経団連とは定期的に意見交換を行っている。
グルッペ理事の講演の概要は次のとおり。

■ DLRの役割

DLRは、ドイツの宇宙関連プログラムを所掌し、ドイツ宇宙業界の利益を代表する機関である。われわれの活動は、(1)宇宙の持続的な利用 (2)市民への利益 (3)個々人の安全保障 (4)国際協力の促進 (5)商業活動の増大――に寄与することを目指している。一言で要約すると、DLRの使命は「地球の利益のために宇宙を探索すること」だ。

ドイツの宇宙プログラムは、(1)ドイツ宇宙産業の競争力強化に貢献すること (2)戦略的に重要な技術の競争力強化に貢献すること (3)多分野で科学の位置づけを確保すること――を目的としている。

例えば、DLRのレーダー衛星は他の衛星よりも地理的な正確性に優れており、気候変動や災害への対応に役立っている。

■ 宇宙の商業利用

宇宙の商業利用について、私は3つの仮説を持っている。

第1に、宇宙は日々の生活を支えるインフラとして機能している。ビジネスのインフラでもあるので、能力の向上を図るために、人、アイデア、資金をうまく組み合わせなければならない。

第2に、宇宙事業は成功するビジネスモデルだ。宇宙ベンチャー企業で成功するのは10%であっても、その10%で投資額よりも多くの金額を回収できる。米国の宇宙ベンチャー企業への投資額は200億ドルに迫るともいわれており、その10%だけでもドイツ政府の宇宙予算に匹敵する。

第3に、ドイツは欧州の、日本はアジアの宇宙産業の中心になれる。日独はともに高い技術力や研究機関を持ち、ハイテク産業の輸出国である。

このためにDLRとしては、(1)新規技術の開発促進 (2)増加する政府需要への対応 (3)宇宙産業と宇宙科学の競争力強化 (4)衛星の運用基数や宇宙利用サービスの増加――に取り組んでいきたい。これらを達成できれば、宇宙産業は研究開発だけでなく、市民の利便性向上やビジネスの成功に貢献できる。

日本はドイツにとって戦略的に重要な国であり、これまでも両国の宇宙産業は協力してきた。今後、宇宙の商業利用にあたり直面する課題に対しても、長期的な視点で連携していきたい。

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総会終了後、懇親会が開催され、宇宙開発利用推進委員会メンバー、石原宏高内閣府副大臣、国会議員、政府関係者、有識者など約160名が参加した。

【産業技術本部】