Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年7月27日 No.3325  規制改革推進会議の答申と今後の課題について聞く -行政改革推進委員会・規制改革推進部会

規制改革推進会議の大田議長

経団連は7月10日、東京・大手町の経団連会館で行政改革推進委員会(山本正已委員長、筒井義信委員長)、規制改革推進部会(竹村信昭部会長)の合同会合を開催し、規制改革推進会議の大田弘子議長から「規制改革推進会議の第1次答申と今後の課題」について説明を聞いた。
概要は次のとおり。

■ 答申の概要

規制改革推進会議は5月23日に「規制改革推進に関する第1次答申」を取りまとめ、安倍総理に提出した。答申には、「農業」「人材」「医療・介護・保育」「投資等」の各ワーキング・グループと本会議、行政手続部会で検討した141項目の規制改革事項が盛り込まれた。

具体的な規制改革項目としては、(1)農業の生産資材価格の引き下げ (2)生乳の生産・流通等に関する規制改革 (3)職務、勤務地、労働時間を限定する「ジョブ型正社員」の雇用ルールの確立 (4)介護サービスの提供と利用のあり方に関する改革 (5)社会保険診療報酬支払基金に関する見直し (6)税・社会保険関係事務のIT化・ワンストップ化 (7)自治体等が保有する個人データの活用 (8)旅館業に関する規制の見直し (9)労働基準監督業務の民間活用 (10)行政手続きコストの削減――等がある。

■ 規制改革を進めるうえでの論点

同答申を取りまとめるにあたり、難しいと実感した論点が3つある。1つ目は「選択肢の増加は格差の拡大を招くのか」という点である。介護サービスでは介護保険内サービスと自己負担のある保険外サービスを柔軟に組み合わせ、同時一体的なサービス提供や指名料・時間指定料の徴収などを可能とすれば、利用者にとって大きなメリットとなる。それだけでなく、市場が拡大し、介護事業者の収入も増えることが見込まれるものの、富裕層の優遇につながるとして強い反対がある。

2つ目は「地方における規制改革をどう進めるか」である。今回は自治体ごとに異なる書式・様式の統一を取り上げたが、国が一律の方針を出すことは地方分権に反する。といって個々の自治体と話し合うことは現実的に困難だ。地方6団体と連携して進めることとしているが、難しい問題だ。

3つ目は「雇用分野の関係者の意見集約をどう進めるか」である。ジョブ型正社員をめぐる議論では、経営側(経団連)と労働側(連合)がともに、「当事者間で解決すべきこと」という理由で反対した。経団連と連合は大企業関係者の団体だからであろう。組合のない中小企業の労働者や非正規労働者の声が抜け落ちているなかで、いかに雇用改革を進めるかは難しい課題である。

<質疑応答>

竹村部会長が、経団連要望の提出先である「規制改革ホットライン」の運営に関して、(1)標準処理期間の徹底 (2)税の手続きに該当する案件への確実な対応――を求めた。大田議長からは、(1)ホットラインの進め方を工夫したい (2)税の手続きに関する要望も排除せず取り組む――と応じるとともに、優先度合いを考慮した規制改革要望の提出をお願いしたいとの発言があった。

【産業政策本部】