Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年8月3日 No.3326  夏季フォーラム2017 -第5セッションで麻生副総理が講演

経団連(榊原定征会長)は7月20、21の両日、長野県軽井沢町のホテルで「夏季フォーラム2017」を開催した。今号では第1、第5セッションの概要を紹介する。

夏季フォーラム第5セッションでは、特別講演として麻生太郎副総理・財務大臣の講演を聞くとともに、意見交換を行った。講演のポイントは次のとおり。

■ アベノミクスによるデフレ対策

2012年末に安倍政権が発足し、財務大臣就任の最初の仕事として、日本が長年苦しんだデフレからの脱却を図るため、日銀に対して積極的な金融緩和を強く求めた。また財政面でも、「コンクリートから人へ」というスローガンのもとで進めていた政策の方向性を大きく変え、経済成長に必要な分野にしっかり財政の手当てを行った。

この結果、現在までに経済情勢は大きく好転し、株価は2万円台を回復、ドル円相場は政権発足前の79円台から100円台まで下落、企業業績も過去最高水準、企業の年間の倒産件数は約8千件まで減少している。さらに、法人税の増加等により税収総額も政権発足時から15兆円増加した。

■ さらなる経済好循環の実現に向けた施策

今後、さらなる経済の好循環の達成に向け、家計や企業が現預金として保有しているマネーをいかに活用していくかが重要である。経済学の教科書では、ある人に余剰資金が生まれた場合、さらなる消費や投資を行いたいと考える人が現れて資金を借り入れることで均衡が成立すると説明されている。しかし、わが国では、個人の金融資産1800兆円のうち、約950兆円が現預金としてためこまれたままであり、消費や投資に結びついていない。また企業においても、内部留保は毎年約25兆円の増加をみせており、余剰資金を適切に活用できていない。

■ 余剰資金の活用策

現在、長期金利はゼロ水準であるため資金の調達コストはほぼない。そのため、リニア中央新幹線の建設に大規模な財政投融資による貸し出しを行うことにした。その結果、リニア中央新幹線の開業が8年前倒しできることになった。このように、余剰資金を経済成長につながる大規模なインフラ投資と結びつけることは政府の役割であるので、継続的に進めていく。

また、企業内でも余剰資金の活用策を考えるべきである。企業の積極的な投資や賃金の引き上げも重要であるが、例えば、住宅手当の拡充を行えば、家賃の負担が減るため、もう少し大きな部屋を借りようと思うなど、直接、消費を促す効果が期待できる。大きな部屋を借りることができるようになった結果、出産や育児などに対する安心感が生まれるなど、その他の面での波及効果も期待できる。

■ 経済界への期待

国内では、人口減少や債務の増加などにより将来不安を感じている人が多いが、わが国企業は、外国の人々が息をのむような技術・ノウハウを持っている。例えば、日本の新幹線は、海外の鉄道と比べて安全で定刻に運行できることが有名であり、また中小企業にも大企業を驚かせるような製品をつくっているところが多数ある。

こうしたモノづくりへの好奇心や改良しようとする挑戦心は、わが国の経済成長の核である。今後、人口減少が想定されるなか、AIやロボットなどの革新的技術を用いた製品や、新たな視点でのサービスが求められる。経済界には、自信を持って新しい時代に合わせた技術やノウハウの革新を進めてほしい。

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講演後は、参加者との間で、財政健全化への取り組み、女性のエンパワーメントの重要性、個人消費の活性化策等をめぐって活発に意見交換が行われた。

【政治・社会本部】