Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年8月31日 No.3328  民法(債権関係)改正について意見交換 -盛山法務副大臣(当時)が講演/経済法規委員会

講演する盛山副大臣

経団連は8月1日、都内で経済法規委員会(永易克典委員長)を開催し、盛山正仁法務副大臣(当時)から、今年5月に成立した民法(債権関係)の改正について講演を聞き、意見交換を行った。講演の概要は次のとおり。

■ 民法の債権関係の規定について121年ぶりの大改正

1896(明治29)年に民法が制定されて以来、債権関係の規定についてはほとんど改正されていない。この間、時代に合わなくなった部分や規定が足りない部分については、裁判所の判例で補うことにより対応してきたが、債権法は基本的なルールであるにもかかわらず、条文を読んだだけではわからないとの指摘があった。

そこで、法制審議会で5年以上かけて審議を行い、2015年3月に改正法案を国会に提出、今年5月26日に成立し、121年ぶりの大改正が実現した。

■ 主要な改正項目

(1)消滅時効

職業別に1~3年の消滅時効が定められており、ある債権にどの時効期間が適用されるのかわかりにくいとの指摘があり、また、現在ではこれらの区別を合理的に説明することが難しくなっていた。そこで、これを廃止し、時効期間を「権利を行使することができることを知った時から5年」に統一した。なお、「権利を行使することができる時から10年」という時効期間は維持する(いずれか早い方の経過により消滅時効完成)。

(2)法定利率

現行の年5%の法定利率について、昨今、市中金利を大きく上回る状態が続いていたことから、年3%に引き下げることとした。あわせて、市中金利の動向に合わせて1%刻みで緩やかに変動し得る仕組みを導入する。

(3)保証

賃貸借契約に基づく債務など貸金等債務以外の債務に対する根保証についても、想定外の多額の保証債務の履行を求められる事例が少なくないことから、極度額を定めることを義務づける。また、安易な保証による生活の破綻を防ぐ観点から、事業用融資の第三者個人保証に関し、公証人があらかじめ保証人本人から直接その保証意思を確認しなければ保証契約は効力を生じないとのルールを新設する。

(4)約款

ある特定の者が不特定多数の者を相手方とする取引で、内容の全部または一部が画一的であることが当事者双方にとって合理的なものを「定型取引」と定義し、定型取引で用いられる「定型約款」に関する規律を新設する。定型約款が契約の内容となるための組入要件を定めるとともに、契約の内容とすることが不適当な内容の契約条項は契約内容とはならないことを規定する。また、相手方の一般の利益に適合する場合、または、変更にかかる事情に照らして合理的な場合には、定型約款準備者による一方的な定型約款の変更を認める規定も置く。

■ 改正法の施行日

改正法は、十分な準備期間を確保する観点から、「公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日」に施行する。具体的な施行日は今後検討するが、政令は早めに定めるようにしたい。

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最後に永易委員長は、改正法に沿った実務が定着し、安定した法的環境のもと、経済取引が一層活性化することを強く期待すると述べるとともに、経済活動を拡大させ、国民生活をより豊かにする法制の実現に向け、引き続き法務省と連携していきたいと締めくくった。

【経済基盤本部】