Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年9月7日 No.3329  社会保険と従業員の労務管理に関する行政手続コストの削減について聞く -行政改革推進委員会規制改革推進部会

経団連は8月10日、東京・大手町の経団連会館で行政改革推進委員会規制改革推進部会(竹村信昭部会長)を開催し、厚生労働省の奈尾基弘参事官、竹林悟史課長、栗林真調整官、野中祥子課長補佐から、7月に公表された「社会保険と従業員の労務管理に関する行政手続コスト削減の基本計画」について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 背景

「日本再興戦略2016」では、わが国を「世界で一番企業が活動しやすい国」とすることを目指し「事業者目線で規制改革・行政手続の簡素化・IT化を一体的に進める新たな規制・制度改革手法の導入」をうたっている。同戦略に基づき、規制改革推進会議行政手続部会が集中的に検討を行い、今年3月に取りまとめを公表した。

取りまとめでは、行政手続簡素化の3原則や重点分野における削減目標の設定、目標達成に向けた各省庁による基本計画の策定等が盛り込まれている。これを受け、厚労省は7月に「社会保険に関する手続」「従業員の労務管理に関する手続」をはじめとする各重点分野にかかる基本計画を策定した。

■ 社会保険に関する手続の基本計画

社会保険に関する123手続のうち、全体の手続件数の9割以上を占める28手続を基本計画の策定対象とした。行政手続コストの削減に向けて、政府横断的な3原則も踏まえて3つの方策を検討している。

1つ目は手続のオンライン化の推進である。28手続におけるe-Gov(電子政府の総合窓口)を通じた申請は約9%にとどまるが、CDやDVD等の電子媒体を活用した申請を含めると約5割が電子的な方法で申請されている。申請に関するデータ共有の前提となるAPIソフトの普及やe-Govの利便性向上等に取り組みつつ、一定規模以上の事業者に対する電子的申請の義務化についても検討したい。

2つ目はバックヤード連携の徹底である。被保険者のマイナンバーを活用して地方自治体から氏名・住所等の変更情報を取得し変更届等を廃止することや、健康保険に関する手続で従業員の押印や証明を省略することを検討している。

3つ目はワンストップ化の実現である。届出契機が同じ手続の様式や窓口を統一化し、同様の書類を複数の行政窓口に提出することがないようにしたい。この取り組みにはシステム改修を伴うため、2021年度までの5年間を取り組み期間としている。

■ 従業員の労務管理に関する手続の基本計画

労働基準法等に基づく40手続のうち26手続と、助成金に関する70手続のうち42手続を基本計画の策定対象とした。

労働基準法等に基づく行政手続コストの削減に向けて、(1)社会保険労務士が提出代行する際における使用者の電子署名・電子証明書の省略(2)時間外労働等に関する協定届の本社一括届手続の簡素化(3)労災保険の特別加入(海外派遣者)にかかる報告書の提出廃止――等に取り組む。

助成金に関しては、オンラインや郵送による申請の受け付けや、書類作成補助ツールの作成等を通じて、ハローワークへの往復時間や待ち時間、書類作成時間を軽減したい。

【産業政策本部】