Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年10月12日 No.3334  フィッツジェラルド・アイルランド副首相兼企業・イノベーション相との懇談会を開催 -英国のEU離脱も見据えアイルランドの優位性について聞く

フィッツジェラルド副首相(右)と佐藤委員長

経団連のヨーロッパ地域委員会(佐藤義雄委員長、越智仁委員長)は9月28日、東京・大手町の経団連会館でアイルランドのフランシス・フィッツジェラルド副首相兼企業・イノベーション大臣との懇談会を開催し、同国の経済情勢やアイルランドのビジネス環境、英国のEU離脱後等について聞いた。フィッツジェラルド副首相の発言要旨は次のとおり。

■ 経済情勢とビジネス環境の優位性

アイルランドは過去の経済危機から回復し、他のヨーロッパ諸国と比較しても安定的な成長を遂げている。2016年のGDP成長率は5.2%を達成し、17年は4.3%の成長が予測されている。雇用も拡大しており、来年末までに完全雇用に近い状態を実現する見込みである。

アイルランド経済は、海外からの直接投資と地場産業の育成という2つの成長の原動力を基盤としている。バイオ医薬品分野、IT分野におけるグローバル企業の上位10社のほぼすべてがアイルランドに投資している。多くの日本企業からも積極的かつ継続的な投資があることに感謝している。

アイルランドの優位性の1つは税制にあり、12.5%の法人税率は今後とも堅持する。研究開発・イノベーションに従事する企業に対する法人税控除や助成金交付制度も有している。

また、地場産業を育成すべく、イノベーションと起業への支援を継続しており、建設、医療、環境、食品、ITなど幅広い分野で輸出が増加している。Fintechや金融、IT、再生可能エネルギー、医療産業等の分野で日本企業との連携事例も多い。

産業開発庁と商務庁が日本企業のビジネスを最大限支援する。指摘のあった住宅事情の逼迫などにも対応したい。

■ 日EU EPAの意義

日EU EPAの戦略的な価値は極めて高く、日本とEUが共有する民主主義や自由貿易という価値観に基づき、国際的な企業活動に対する支援を世界的に推進するものである。保護主義の動きが高まるなか、アイルランド政府はグローバル化を後退させることはない。双方の市場開放により、日本とアイルランドの貿易・投資の一層の促進に資すると確信しており、早期の最終合意実現を期待する。

■ 英国のEU離脱問題

英国との国境問題は優先事項として交渉されている。アイルランドは英国のEU離脱後に唯一、EU加盟国で英語が母国語となる。すでに多くの企業が英国から移転しており、特に金融機関からの関心が高い。

離脱交渉においては、企業の関心事項である関税や貿易の議論に早期に移り、また移行期間が設定されることを望む。

【国際経済本部】