Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年10月26日 No.3336  「わが国財政の現状」を財務省から聞く -経済財政委員会財政改革部会

経団連の経済財政委員会財政改革部会(太田純部会長)は10月5日、財務省主計局の関口祐司調査課長から、わが国財政の現状について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ わが国財政の現状

2017年度一般会計の歳出総額(97.5兆円)のうち、社会保障関係費だけで3分の1を占め、国債費と地方交付税交付金を合わせた3費目で歳出全体の4分の3にも上る。歳入に占める税収は約6割にとどまり、残りは国債を発行して賄っている。大幅な財政赤字が継続して、国の公債残高は累増し、今年度末には、約865兆円に達する見込みである。国・地方を合わせた債務残高対GDP比をみると、主要先進国は概ね100%前後で国の経済規模に見合う水準だが、日本だけは200%を超え、飛び抜けて高くなっている。

■ 社会保障分野の課題

国債残高増加の主な要因は、税収減と高齢化の進行に伴う社会保障関係費の増加である。現在の社会保障制度は、社会保険方式でありながら、高齢者医療・介護給付費の5割を公費で賄うなど公費負担に依存している。医療・介護にかかる費用は、75歳以上の後期高齢者になると大きく増えるため、今後、団塊の世代の全員が後期高齢者に移行する25年にかけて、医療費・介護費にかかる国庫負担額も急増する見込みである。

社会保障・税一体改革は、消費税率の引き上げによって社会保障の充実と安定化ならびに財政健全化目標の達成を目指すものである。このなかで、医療・介護の連携強化を含む医療提供体制の見直しにも取り組んでいる。

■ 財政健全化の必要性

財政赤字の問題としては、(1)公的サービスの水準低下 (2)世代間不公平 (3)民間部門の経済活力低下 (4)財政への信認低下による金利上昇――などがある。わが国は現在、金利が低く抑えられているため、利払い費が公債残高の大きさに比べて抑制されている。しかし、欧州債務危機のように財政への信認が損なわれれば、金利が急騰し、政府の資金調達が困難となるだけでなく、国債を保有する金融機関のバランスシートが悪化して、金融システムも不安定化し、一国だけでは対応できないリスクが顕在化する可能性がある。

■ 財政健全化の道筋

「骨太方針2015」では、20年度までのプライマリーバランス(PB)黒字化達成に向けて、「経済・財政再生計画」を策定し、16~18年度を集中改革期間と定めた。歳出改革の目安として、一般歳出の伸びを3年間で1.6兆円程度に、そのうちの社会保障関係費の実質的な増加を3年間で1.5兆円程度に収めることを示し、毎年の予算編成に取り組んでいる。

来年度にはこれまでの取り組みについて中間評価を行い、評価の結果、必要な場合は、歳入・歳出の追加措置を検討することになっている。

なお、今年7月に内閣府が公表した中長期試算では、経済再生ケースでも20年度のPB赤字が約8.2兆円残るが、あくまで歳出の伸びを機械的に置いただけであり、歳出改革をすれば収支が好転することに留意する必要がある。

【経済政策本部】