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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年12月14日 No.3343 第23回「経団連 Power Up カレッジ」 -「事業経営と変化~日立グループの取り組みから」/日立製作所の中西会長が講演

経団連事業サービス(榊原定征会長)は11月16日、東京・大手町の経団連会館で第23回「経団連 Power Up カレッジ」を開催、日立製作所の中西宏明会長から講演を聞いた。概要は次のとおり。

■ グローバルビジネス環境の急激な変化

デジタル産業革命の進展により、社会・産業構造が急激に変化している。コンピューターの性能が劇的に向上し、通信速度は爆発的に速くなり、デジタル関連機器の価格は大幅に下がった。ドイツではIndustrie 4.0、日本ではSociety 5.0に向けて進むことで、製造業のバリューチェーンも大きく変わっていく。

顧客の求める価値は商品(モノ)ではなく、成果(コト)になった。既成概念を取り払った新サービスが次々と生まれている。先に変化を創造したプレーヤーのみが生き残るという時代になった。

■ 事業構造改革への取り組み

日立製作所は107年前、小さなベンチャー企業として創立された。2017年3月決算ではグループ全体で売上高9兆円、従業員は全世界で30万人(うち日本は18万人)である。高度成長期以降、製品群を増やすことで成長してきたが、1990年代後半からコモディティー化した製品は新興国・地域(韓国、中国、台湾)にシェアを奪われ、08年度にはリーマンショックの影響で日本の製造業史上始まって以来の巨額の赤字を計上した。

しかしその後、事業ポートフォリオを見直して事業の選択と集中に取り組み、V字回復を遂げた。時代の流れに乗って成長するのは経営ではない。環境変化のなかで何をすべきか考え、実行していくことが経営である。

■ 社会イノベーション事業への転換

業績回復の後、豊富な製品群を持つ複合企業のメリットを活かす手立てを検討し、制御・運用技術、IT、製品のすべてを組み合わせれば圧倒的な競争優位に立てるのではないか、と考えた。「お客さまが抱える課題=社会が抱える課題」を解決する、という新しいビジネスを「社会イノベーション事業」として立ち上げ、日立グループ全体で取り組んできた。

「当社の技術・製品は良いので使ってほしい」ではなく「お客さまに対してどのようにお役に立てるのか、何をしなければならないか」というところからビジネスをスタートする。その解決策として製品・システムや技術を組み合わせ、保守や運営まで含めたトータルソリューションとして提供する、というのが社会イノベーション事業の基本的なコンセプトである。

この事業における大きな武器はデジタルの力である。お客さまは多くのデータを持っており、それを当社のプラットフォームを使って管理・分析し、顧客協創ツールで一緒にビジネスモデルを考えていく。一番大事なことはフロント(地域拠点)において、お客さまの近くでサービスを開発・提供する点である。フロント機能の強化のため人財育成にも力を入れている。自社の技術・製品で対応できない場合にはオープンソリューションで対応する。お客さまの課題を解決するビジネスを通じてIoT時代のベストソリューションパートナーになる、というのが当社のこれからの経営の方向性である。

■ リーダーの役割と責任

ビジネスのやり方を変えるにはリーダーの意識改革が急務である。変化を追いかけるのではなく、変化を創り出すのがリーダーである。変化と向き合うため、自身をどう変えていくかはリーダーの責任であり、皆さんもそれぞれの立場でしっかり考えてほしい。

【経団連事業サービス】

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