Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年1月1日 No.3344  Brexitが英国、EUそして米国に及ぼす影響を探る

Hard BrexitかSoft Brexitか――。

12月15日、ロナルド・レーガン・ビルにあるウィルソン・センターで、「After Brexit~Brexitの成り行きと英国、EUそして米国への影響」と題するセミナーが開催され、ランド研究所のレポートに関するパネル討議が行われた。

ランド研究所は、ワシントンDCではなく、カリフォルニア州サンタモニカに本拠を構えている。スタッフは1775名に上り、その54%が博士号を取得している。ミッションとして「調査分析を通じて政策および意思決定の改善に資すること」を掲げており、政策形成に多大な影響力を持っている。

当日は、チャールズ・リース氏(USTRでNAFTA交渉、国務省で欧州担当の後、ギリシャ大使を経て現在ランド研究所副理事長)をはじめとする執筆者が壇上に上がり、レポートの中身を説明した。

まず、英国がEUを離脱し新たな交渉を始めなかった場合、EU単一市場および関税同盟との関係が絶たれ、関税はWTOベースに戻り、EUスタンダードから外れることで英国の非関税障壁(NTB)が増加する。このシナリオでは、英国は、EUを離脱しなかった場合に比べ、今後10年間でGDPは4.9%(1400億ドル)減少する。EU27カ国のGDPは0.7%(970億ドル)減、米国は0.02%(40億ドル)増となる。

Hard Brexitシナリオには、英国がさまざまなFTA交渉を始めるケースが含まれる。英国がEUとFTAを結べば、GDPは英国で3.0%増、EUで0.5%増に対し、米国で0.01%減となる。英国、EU、米国のFTA、すなわち環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)が実現すれば、英国で7.1%増、EUで0.5%増、米国で4.2%増となる。英国が米国とFTAを結べば、英国で2.4%増、EUで0.1%減、米国で0.2%増となる。

Soft Brexitシナリオには、ノルウェー・モデルとスイス・モデルが含まれる。ノルウェー・モデルでは、英国は「欧州経済地域」に所属し続けることになり、関税同盟からは離脱するがEU統一市場へのアクセスは確保される。この場合、英国はEUの財、サービス、資本、ヒトの自由な移動に関するEUルールに従うことになり、政治的には難しい。しかし、GDPは、英国で3.2%増、EUで0.5%増、米国で0.01%減となる。スイス・モデルでは、英国はEU統一市場に残るが、財のみでサービスは含まれない。この場合、GDPは、英国で2.5%増、EUで0.4%増、米国では0.01%減と変わらない。

Brexitは米国にとっても重大事項といわれるが、このレポートによればTTIPの重要性はわかるものの、総じて直接的経済効果は大きくない。むしろ離脱交渉からの新たな展開のなかで、英国の政策が欧州の結束に与える影響に注目しており、政策や意思決定を左右するシンクタンクの役割をみた思いがした。

(米国事務所長 山越厚志)