Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年2月22日 No.3351  日米に関する次世代の声やグラス・ルーツの動きを探る -ワシントン・リポート<30>

ベルトウェイの内側で暮らしていると、時折その外に出て、各地の様子や外からワシントン政治がどうみられているか等について、意見交換を通じて学ぶことも多い。

2月16日に、濱田宏一イェール大学名誉教授の招きで同大学を訪問し、日本に関心を持つ教職員、大学院生らの前でスピーチする機会を得た。これまでは、日本企業が投資している州への訪問が多かったが、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学などのあるボストンやイェール大学のあるニューヘイブンを訪問し、日米関係のオピニオン・リーダーたちと意見交換するのも大事な任務と考えてきた。

スピーチに先立ち面会したフランシス・ローゼンブルース教授は、ジェラルド・カーチス・コロンビア大学名誉教授のもと、日本政治で博士号を取得した方で、小泉政権の郵政改革とアベノミクスとの比較や日本の移民政策に関する日本企業のスタンスなどについて問題認識を示された。トランプ政権の評価はあまり話題にならなかったが、「アメリカ・ファーストなら本来TPP復帰もあり得るのではないか」と尋ねたところうなずかれた。

スピーチ・セッションには、米国人学生のみならず、シンガポール、台湾、中国、そして日本からの留学生も参加し、アジア各地における日中企業のアプローチの違いや、日本の技術者の対外流出、Society 5.0のねらいなどについて質問が出た。トランプ政権の動向などは話題にならず、時折冷ややかな空気が漂った。

翌2月17日には、大雪の予報からアムトラックの予約を1本早めてワシントンDCに戻り、佐々江賢一郎大使公邸でのレセプションに参加した。ワシントンDCには National Association of Secretaries of State (NASS)という組織があり、設立は1904年と、米国で最も歴史のある超党派の公務員組織と銘打っている。当日は、NASS冬季会合に全米各州から参加した州務長官やスタッフがゲストだった。

通常、“Secretary of State”といえば国務長官だが、この場合は各州の州務長官となる。私も各州との連携強化のため、ミッション、講演会等で各州を訪問することが多く、その際知り合った人々に再会できると思いきや、ほとんどが初対面だった。われわれが通常面会する現場トップは商務長官であり、州務長官ではなかったことに思い至った。

ミシガン州からの参加者に聞くと、州務長官の主要任務は選挙管理で、今回会合のアジェンダも今年の中間選挙に向けた準備やサイバーセキュリティーの影響などが中心となっている。「政治家のスピーチもあったが、ワシントン・ポリティクスはまっぴら。州ポリティクスで十分」との話だった。

商務長官であれば、日本との経済交流に知識、経験、関心があり、知事同行などで訪日、さらには経団連訪問の話題等で盛り上がる。しかし、州務長官となると、関心はあっても訪日経験はない人が多く、むしろ各州訪問の折に街角などで会う人との会話に近かった。その分、グラス・ルーツで各州の実態、日本への関心程度を生で感じる貴重な機会となった。

(米国事務所長 山越厚志)