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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年3月22日 No.3355 東京2020オリンピック・パラリンピックに向けたアクセシビリティの取り組み聞く -生活サービス委員会ユニバーサル社会部会

経団連は3月2日、東京・大手町の経団連会館で生活サービス委員会ユニバーサル社会部会(河本宏子部会長)を開催し、DPI(注)日本会議の佐藤聡事務局長から、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた競技場等のユニバーサルデザイン化の取り組みと課題について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 障害者権利条約と社会モデル

06年に成立した国連の障害者権利条約は、「障害は環境にあるという社会モデルの理念の導入」「障害に基づく差別の禁止」「インクルーシブな社会」の3つを内容とし、176カ国が批准している。

社会モデルにおいては、機能障害と障害を分けてとらえ、障害は個人にあるのではなく、社会の環境にあると考える。ドアの幅や机の高さ等、健常者が日常生活で享受しているさまざまな合理的配慮を障害者にも適用することを目指している。

■ 日米のスタジアム

日本には、IPC(国際パラリンピック委員会)の定めるバリアフリー基準を満たすスタジアムがない。車椅子席数やサイトライン(視界)の確保が不十分なうえ、専用の入場口やエレベーターを利用する必要がある。

その一方、アメリカのスタジアムは健常者と障害者の場を分けておらず、出入口、トイレ、売店、チケット窓口などを障害者が健常者と同じように利用できる。これは、ADA(障害のあるアメリカ人法)に基づく基準により、一定割合以上の車椅子席の設置(収容人数5000人以上のスタジアムの場合、0.5%以上)やサイトラインの確保等が定められているためだ。

■ 東京オリンピック・パラリンピック競技場の整備状況

16年3月から、東京都のアクセシビリティ・ワークショップにおいて、都が造る建築物のバリアフリー化について検討している。そこでは、東京大会に向けて策定された「Tokyo 2020アクセシビリティガイドライン」(日本で初めてIPCの基準をクリアしたアクセシビリティガイドライン)に基づき、11の施設の新築・改築について議論されている。

新設の建物については、例えば「武蔵野の森総合スポーツプラザ」では、同ガイドラインを遵守した整備が講じられている。また、改修においても、都の運営するスタジアム(東京体育館、東京スタジアム)について、前方の席を3列ほど撤去してサイトラインを確保している。しかし、民間のスタジアムについては同ガイドラインの遵守義務がないため、整備が不十分な部分もある。

■ 東京オリンピック・パラリンピック招致の効果

社会は本来、多様な人で構成されており、多様性が社会を力強くする。東京オリンピック・パラリンピックは、世界基準のアクセシビリティガイドラインの導入や、障害者の意見を反映した建築物の整備等を促進している。こうしたこともあり、「障害の有無にかかわらず、だれもが同じように社会で生きていくべき」という共生社会の理念が浸透してきていることは、非常に好ましいと感じている。

(注)DPI(Disabled Peoples' International)=障害のある人の権利の保護と社会参加の機会平等を目的に活動をしている国際NGO

【産業政策本部】

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