Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年4月5日 No.3357  ロシア極東投資誘致促進説明会を開催 -日本ロシア経済委員会

極東発展のあり方をめぐって熱心な議論が展開

経団連は、8項目の「協力プラン」(注)の具体化に協力すべく、ロシアのビジネス環境の改善を働きかけている。地理的に近接する極東をゲートウエーとした互恵的な日露ビジネスの拡大と深化が「協力プラン」の成否の重要なカギを握る。

こうしたなか、ロシア極東発展省傘下の極東投資誘致・輸出促進エージェンシー(以下、エージェンシー)のレオニード・ペトゥホフ総裁一行が来日した機会をとらえ、経団連の日本ロシア経済委員会(朝田照男委員長)は3月20日、東京・大手町の経団連会館で極東への投資誘致の促進に向けた説明会を開催した。日露企業や政府関係者等120名以上が参加した同説明会では、ペトゥホフ総裁はじめ農業やインフラ等を担当する各局長から説明を聞くとともに、日本側参加者と活発な意見交換が行われた。説明の概要は次のとおり。

■ ロシア極東の優位性

プーチン大統領がその開発を国家の最優先課題と位置づける極東・シベリア地域は、ロシアの国土の36%を占めるとともに、ダイヤモンドや金、木材、石油・ガスほか天然資源を豊富に有する。

こうした優位性をてこに投資機会を掘り起こすべく設置された18の先進経済特区(TOR)とウラジオストク自由港(FPV)では、税制上の優遇措置や簡素化された行政手続き、低廉な光熱費等のサービスが提供されている。さらに、昨年8月から、8日間以内の滞在であれば電子ビザの申請も可能となった。

これらTORやFPVにおいて、エージェンシーはプロジェクトの選定や地場パートナーとのマッチング、融資、土地取得、人材確保に至るさまざまな面で外国投資家の活動を支援している。

■ 日本の投資家への期待

極東でとりわけ有望なビジネス分野は、石油・ガス、石油化学、金属・鉱業、観光、機械、建設、エネルギーに加えて、農業、水産養殖、木材加工、インフラ・運輸等である。

  1. (1) 農業
    広大で安価な土地に恵まれ、成長著しいアジアの旺盛な食料需要に近接しているほか、政府の支援も手厚い。卸売物流センターや穀物輸送ターミナル等のインフラ整備が進むなか、大豆や小麦、とうもろこし等の穀物、砂糖、乳製品、畜産等の生産ポテンシャルは大きい。

  2. (2) 水産養殖
    水産業外国投資法のもと、外資による出資比率は49%以下に制限されるが、FPV入居企業の権利は国によって保護されている。容量が圧倒的に不足している冷蔵・冷凍等の加工・流通施設の建設や、清浄な海域を利用したホタテやウニ等の養殖が有望である。

  3. (3) 木材加工
    ロシア全土の材木の51%が極東に賦存しているが、ハバロフスク地方や沿海地方を除いてほとんど利用されていない。1立方メートル当たりの森林の価額は中国の3分の1以下であり、パルプ・製紙業に日本企業が参入する余地は大きい。

  4. (4) インフラ・運輸
    極東には30以上の港湾施設があり、貨物取扱量は全国の26%を占める。極東から積み出される貨物の8割以上が石炭および液体燃料(石油、液化ガス等)であるが、今後はコンテナ貨物の拡大が見込まれている。極東地域の発展のためには輸送インフラの整備が不可欠であり、さまざまな形態での港湾施設への投資を促したい。

(注)協力プラン=2016年5月、ソチにおける日露首脳会談で安倍首相がプーチン大統領に提示した (1)健康寿命の伸長 (2)快適・清潔で住みやすく、活動しやすい都市づくり (3)中小企業交流・協力の抜本的拡大 (4)エネルギー (5)ロシアの産業多様化・生産性向上 (6)極東の産業振興・輸出基地化 (7)先端技術協力 (8)人的交流の抜本的拡大――の8項目から成る経済協力プラン

【国際経済本部】