Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年5月17日 No.3361  提言「デジタルエコノミー推進に向けた統合的な国際戦略の確立を」を公表 -デジタルエコノミーを国家戦略の中心に据えよ

経団連(榊原定征会長)は5月15日、提言「デジタルエコノミー推進に向けた統合的な国際戦略の確立を」を公表した。

社会のあらゆる場面でデジタル化が進み、さまざまなモノやヒトのデータが世界中を駆け巡ることで、革新的な製品・サービス、ビジネスモデルが次々と生まれている。提言では、こうしたデジタルエコノミーをめぐる昨今の情勢を踏まえて、わが国が取るべき国際戦略をあらためて示した。

■ デジタルエコノミーをめぐる基本的な認識

スマートフォンの爆発的な普及等も受け、今世紀はデジタル技術とデータが成長のエンジンとなった。特に米中企業の躍進は目覚ましく、個人データの大量収集・活用により、革新的な製品・サービスを生み出してきた。

データの活用により人々の生活が豊かになる一方で、プライバシーやサイバーセキュリティなどの課題が生じていることも見逃せない。こうした課題を口実にデータの越境移転を規制するデータローカライゼーションの動きが広まりつつある。

わが国は、データが国境を越えて自由に流通する環境の確保に向けて官民で取り組みを進めてきたが、各国のデータ争奪に伍することができていないのが現状である。

■ 経済界が目指す方向性

わが国の戦略の基本コンセプトはSociety 5.0である。多くの課題を抱え、課題解決ビジネスに強みを持つわが国が世界各国のパートナーとなり、課題解決と成長をリードしなければならない。

その際、モノやインフラのデータなどわが国の強みを活かしたり、デジタル時代の課題であるプライバシーとサイバーセキュリティの確保において「安全・信頼・高品質」というわが国の強みを発揮したりすることが期待される。

■ 越境データ流通の確保

Society 5.0を世界に展開するうえで、越境データ流通の確保は前提となる。各国のデータローカライゼーション規制の撤廃をわが国が主導することが重要である。また、プライバシー法制等に関して、バランスが取れた国際的な制度の調和が求められる。原則は自由としつつ、例外として国家機密や営業秘密など守るべき情報への対策を講じることも必要である。

■ 公平・公正な競争条件の確保

デジタルエコノミーは国内外の事業者が国境を越えてサービスを提供するため、国内外の事業者の公平・公正な競争条件の確保が欠かせない。イノベーション促進の観点から国内の法制度・規制を適切に整えつつ、執行や適用は国内外を問わず厳密かつ透明に行うべきである。また、法規制以外の面でエネルギーコストや税制等についても検討することが必要である。

■ 統合的な基本戦略と推進体制

こうした政策を進めるうえで、わが国として統合的な体制を確立することが必要であるが、現在は各府省でバラバラにデジタル戦略が策定され、国際的な視点も欠如している。政府の関連組織をデジタル省などに統合し、統合的な戦略を一元的に実行し、各国とのパートナーシップを築くことが重要である。経済界としても国際的なマルチステークホルダーの議論を主導していきたい。

【産業技術本部】