Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年5月17日 No.3361  「会社法制およびコーポレートガバナンス・コード改訂に関する課題」 -学習院大学の神田教授から聞く/経済法規委員会

経団連は4月3日、都内で経済法規委員会(永易克典委員長)を開催し、学習院大学の神田秀樹教授から、会社法制およびコーポレートガバナンス・コード改訂に関する課題について説明を聞き、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 会社法の見直し

1.株主総会資料の電子提供制度

現在導入が検討されている電子提供制度とは、株主総会の招集通知以外は株主総会に関する資料をすべて電子化し、ウェブサイト等において公開するというものである。

具体的な制度設計における論点としては、(1)上場会社に義務づけるかどうか(2)書面交付請求権の定款による排除を認めるかどうか(3)電子提供措置開始日や招集通知の発送期限をいつにするか――が挙げられる。

2.株主提案権

濫用的な株主提案権の行使の制限に関する規定を設けることが検討されている。

第1に、提案の個数に基づく制限である。これに関する論点は2つある。1つは役員等の選解任の取り扱い(何個として数えるか、個数の制限の対象とするかどうか)である。もう1つは、定款変更議案である。現在は、定款変更議案とすれば、業務執行に関わるものでも議案として提案できることが実務から問題とされている。特に、複数の異なる内容の事項を1つの定款変更議案として提案した場合、いくつの議案として数えるべきかが議論になっている。

第2に、提案目的等による制限である。これについては、「専ら人を困惑させる目的で株主提案を行ったとき」という文言に関して、「専ら」では適用の範囲が限定されるので「主として」にすべきだとの意見も強い。

3.取締役の報酬、会社補償、D&O保険

会社補償とは、会社が役員の損害賠償金や訴訟費用を補償することであり、D&O保険(会社役員賠償責任保険)とは、役員の損害賠償金等を塡補する内容の保険契約のことである。今回、取締役の報酬規定の見直しに加えて、これらに関する規定の新設が検討されている。その背景としては2つの考えが挙げられる。

1つは、会社補償、D&O保険に関し、司法取引等を含め将来を見据えると、規定を設けておいたほうがよいという考え方である。

2つ目は、インセンティブ報酬、すなわちよりリスクをとった攻めの経営に対応した報酬の支払い方、あるいはそれのセーフティーネットとしての会社補償、D&O保険に会社法が対応すべきだという考え方である。

これに対し経済界は、現状で不足はなく、規定の新設等は必要ないとの意見のようである。

■ コーポレートガバナンス・コード改訂

コーポレートガバナンス・コードに関しては、まずは形式から入り、その後実質を整えるという方針で当初導入された。そこで、このたびのスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議では、形式から実質を伴うものにすべく検討がなされ、(1)政策保有株式の「縮減に関する方針」の開示(2)企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮(3)CEOの選解任に関する取締役会の機能強化(4)任意の指名委員会・報酬委員会等の設置(5)ジェンダーや国際性を含む取締役会の多様性の確保(6)適切な経験・能力、必要な財務・会計・法務に関する知識を有する監査役の確保――等が改訂内容として提案されている。

【経済基盤本部】