Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年5月17日 No.3361  経産省・特許庁から不正競争防止法等改正案の概要と最近の取り組み聞く -知的財産委員会企画部会

経団連は4月11日、東京・大手町の経団連会館で知的財産委員会企画部会(堤和彦部会長)を開催し、経済産業省の木村聡審議官、諸永裕一知的財産政策室長、萩原崇弘基準認証政策課長、特許庁の川上敏寛制度審議室長、今村亘企画調査課長から、不正競争防止法等改正案の概要と最近の経産省・特許庁の取り組みについて説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 不正競争防止法等の一部を改正する法律案の概要について

2月27日に、「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が閣議決定された。

(1) 不正競争防止法の改正

  • ID・パスワード等により管理しつつ相手を限定して提供するデータを不正に取得、使用または提供する行為を新たに不正競争行為に位置づけ、不正競争行為に対する差止請求権や損害賠償等の民事上の救済措置を設ける。

(2) 工業標準化法の改正

  • JISの対象に新たにサービス分野等を追加し、「日本工業規格(JIS)」を「日本産業規格(JIS)」とし、法律名を「産業標準化法」に変更する。
  • JISの制定手続について、専門知識等を有する民間機関を認定し、その機関が策定したJISについて審議会への付議を不要とする。
  • 認証を受けずにJISマークの表示を行った法人に対する罰金刑の上限を、100万円から1億円に引き上げる。

(3) 特許法の改正

  • これまで一部の中小企業が対象だった特許料等の半減措置を、すべての中小企業に拡充する。
  • 書類提出命令に際して、裁判所が証拠書類の必要性を非公開手続(インカメラ)で判断できるようにするとともに、第三者の技術専門家が当該手続に関与できるようにする。

■ 特許庁の取り組み

特許庁では、標準必須特許(注)のライセンス交渉の円滑化や紛争解決の迅速化を図るため、権利者と実施者のバランスに配慮した「手引き」を策定しており、まもなく公表予定である。また、特許庁の技術的知見を活用した標準必須性にかかる判断のための判定をこの4月から運用開始しているほか、国際仲裁の活用の可能性についても検討を行っている。

このほか、特許権侵害における損害賠償額の適正な評価について検討を行い、報告書をまとめた。紛争当事者が「ケースに応じた算定方法の選択」や「損害賠償額の考慮要素に関するデータ収集、算定への反映」等を行ってより合理的な主張立証をすることで、より適切な損害賠償額の実現が期待されることを示した。この実現のためにも、同報告書をぜひ活用してほしい。

■ 経産省の取り組み

2015年に国連が採択した「持続可能な開発目標(SDGs)」は、世界的な目標として定着しつつある。日本企業は、SDGsの達成に貢献する国際標準、認証・規制等のルールを形成することで、SDGs関連市場でビジネス機会を創出するという視点が重要である。「SDGsビジネスの可能性とルール形成」と題した報告書を作成したので、参考にしてほしい。

(注)標準必須特許=標準規格の実施に必要な特許。情報通信分野の規格には、同特許が数百・数千に上るものもある

【産業技術本部】