Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年5月24日 No.3362  南海トラフ大地震に備えた防災体制をめぐり意見交換 -名古屋大学の福和減災連携研究センター長が講演/社会基盤強化委員会

講演する福和氏

経団連は4月26日、都内で社会基盤強化委員会(山内隆司委員長、川合正矩委員長)を開催し、福和伸夫名古屋大学減災連携研究センター長から、「南海トラフ大地震に備えた防災体制構築に向けて」をテーマに講演を聞くとともに意見交換を行った。講演の概要は次のとおり。

■ 日本を次世代につなぐために

わが国を災害から守り次世代につなぐためには、(1)インフラ整備などによる外力低減・抵抗力強化を通じた「被害の抑止」(2)資源量の把握と最適な運用による「災害対応力の強化」(3)個人・社会の生きる力を基盤とした「災害からの回復力の強化」――の3点が重要となる。

これらを実現するうえで、わが国では戦後、政府など「公」への依存が強まっていったが、「公」の力には限界がある。今後わが国を維持するためには、「私」すなわち個人や社会が災害への備えを強化し、「公」と「私」の共創・協働を進める必要がある。

■ 東京の人口集中と被害の増大

これまで関東を襲った3つの大きな地震について、今の東京23区にあたる地域内の死者数を比較すると、1703年の元禄関東地震では340人、1855年の安政江戸地震では約7000人、1923年の関東大震災では約7万人と、大きな差が出ている。関東大震災の際、東京の東側の人口は西側の4分の1だったが、死者数は6倍であった。時代とともに、東京の東側の地盤が軟弱な地域に家屋が密集しすぎたために、地震大火でこれだけの死者が生じたといえる。2020年には東京オリンピック・パラリンピックも予定されるなか、東京における災害対策の強化は不可欠である。

■ 災害時の事業継続に向けて

災害時に企業の事業継続を実現するためには、自社設備対策はもちろん、平時からの地域内・業界内・サプライチェーン内の連携が重要となる。現状では、(1)中小企業のほとんどが自社設備対策を実施していない(2)各社の連携によるサプライチェーン対策が不十分(3)集団的な地震対策がほとんど実施されていない(4)どの主体も災害時の機能不全波及の全体像を把握していない――といった課題がある。引き続き、各社の防災対策、組織間の連携を促すことが重要である。

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その後の意見交換では、東京一極集中の是非や、災害対策のための先行投資のあり方について、活発な議論がなされた。

【政治・社会本部】