Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年6月7日 No.3364  シンポジウム「仕事と介護の両立支援の一層の充実に向けて」を開催 -企業における「トモケア」のススメ

経団連は5月21日、東京・大手町の経団連会館で、シンポジウム「仕事と介護の両立支援の一層の充実に向けて」を開催し、約280名が出席した。パネルディスカッション等を通じて、4月に公表した同タイトルの報告書や各社の好事例を紹介した。

冒頭の開会あいさつで、進藤清貴雇用政策委員長は報告書のポイントを紹介。経団連が仕事と介護の両立支援の基本理念として提唱する「トモケア」について、企業が介護に直面した社員と、介護のあり方を「共に」考え、仕事との両立に「共に」取り組むことを意味するものであり、この理念が広く社会に浸透することを願っていると述べた。

■ 基調講演

続いて、共催団体である介護離職防止対策促進機構の和氣美枝代表理事による基調講演が行われた。

和氣氏は、「介護離職予防は福利厚生ではなく、企業の成長や発展に向けた取り組みである」とし、人材の維持や生産性の向上などの観点からの推進が欠かせないと指摘した。

そのうえで必要な取り組みとして、介護に直面した際の心構えなどの事前の情報提供や、社内制度の効果的な使い方などを相談できる環境の整備を挙げた。

また、介護に直面した社員の活躍を支援するには、両立しやすい職場風土を醸成することが不可欠であり、すべての社員が介護について当事者意識を持つことが重要であると述べた。両立支援は、前例のない取り組みで、新たな文化を創造する気概が必要であり、経営者は、リーダーシップを発揮し、介護が日常的なものであると認識できるよう社員のマインドの変革に取り組むことが大切であると強調した。

■ パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、和氣氏のコーディネートのもと、報告書の事例掲載企業(20社)のうち、5社の担当者が「今すぐ実践できる効果的な両立支援策の共有」をテーマに、各社の取り組みの背景や具体的な内容を紹介した。

両立支援推進の原動力である経営トップのリーダーシップの発揮に向けた取り組みとして、全日本空輸の宇佐美香苗人事部D&I推進室長は、社長を含む全役員による直筆の「イクボス」宣言をイントラネットに掲載する取り組みを紹介。副社長による「介護を理由に仕事を辞めないで」とのメッセージを閲覧した社員から「この会社なら安心して両立できると実感した」との声が寄せられており、コストの面での負担が軽く、実施しやすい効果的な取り組みの1つであると述べた。

花王の座間美都子人財開発部門D&I推進部長は、介護との両立支援策に型にはまったものはなく、アンケート調査やヒアリングから得た社員の声をしっかりと反映させていくことが重要であると強調。そのうえで、介護に直面した社員の話を先入観を持たずに聞き、効果的に分析するためには、介護経験のない担当者のフラットな感覚を活用することも重要だと述べた。

千葉銀行の安孫子礼子ダイバーシティ推進部長は、介護セミナーや職場単位での勉強会を通じて介護に直面する前の啓発活動に注力することの効果を指摘。介護セミナーの内容が画一的なものとならないよう、講師の選定に向けてダイバーシティ担当者が外部セミナーに積極的に参加するなどして、日ごろから人脈づくりや情報収集に努めていることを紹介した。

大成建設の塩入徹弥管理本部人事部部長兼人材いきいき推進室長は、両立支援に向けた効果的な情報提供のためのさまざまなツールを紹介。最近では、介護に関する相談窓口の連絡先等を記載した携帯型カードとクリアファイルを配付し、介護に直面したら必ず会社に相談するよう呼びかけていると述べた。

介護との両立に欠かせない職場風土の醸成に関しては、旭化成の吉澤明美人事部ダイバーシティ推進室担当課長が、管理職に研修の一環で短時間勤務の体験を課していることを紹介。介護等により制約のある社員にもチャレンジングな仕事を付与していくには、管理職が短時間勤務者の心情を肌感覚で理解し、コミュニケーションする必要があると述べた。

最後に、すべてのパネリストから、働き方改革の推進を並行して進めることで、介護との両立支援をさらに強化していく旨の意思が示された。

【労働政策本部】