Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年6月14日 No.3365  サンクトペテルブルク国際経済フォーラムに朝田日本ロシア経済委員長が参加

経団連は、地政学的に困難な国際情勢に直面し日露間のビジネスや人的交流が停滞した状況にあっても、日露経済関係の拡大と深化に向けて、地道に取り組んできた。

2015年12月、日露関係に関する経団連として初の提言である「日ロ経済関係の基本的な考え方」(注1)を公表した後、16年6月、モスクワに5年半ぶりのミッションを派遣し、アルカジー・ドヴォルコヴィッチ副首相(当時)はじめロシアの官民リーダーと政策対話を行った(注2)

また、同年末、ウラジーミル・プーチン大統領が来日した際には、二国間関係を新たな次元に高めるべく、安倍晋三首相とともに経団連に招き、「日露ビジネス対話」を開催した。さらに、17年11月に5年ぶりとなる経済合同会議をモスクワで開催し、日露間の貿易・投資の増加とロシアのビジネス環境のさらなる改善という好循環を生み出す方策等について、建設的な議論を行った(注3)

こうしたなか、朝田照男日本ロシア経済委員長は、5月24~26日にサンクトペテルブルクで開催された国際経済フォーラムに経団連を代表して参加し、同25日の「日露ビジネス対話」でプーチン大統領に直接、政策要望を行った。同対話には、安倍首相や世耕弘成経済産業大臣、マクシム・オレシュキン経済発展大臣ら日露関係者約230名が参加した。概要は次のとおり。

日露ビジネス対話で政策要望を行う朝田委員長

■ プーチン大統領に対する朝田委員長の要望

8項目の「協力プラン」(注4)が発表されてから2年、130を超える覚書が締結されているが、日露の経済力を踏まえれば、規模・質ともに物足りない。両国にとってwin-winビジネスをいかに組成するかが重要なテーマである。

8項目のなかでも、日本企業が注視するロシア極東では、優先的社会経済発展区域(TOR)やウラジオストク自由港など、さまざまな投資誘致策が講じられているが、日本企業の利用率はまだまだ低いのが現状である。

日露ビジネスの拡大のためには、第一に鉄道や港湾等、極東のインフラ整備、第二に法人税や固定資産税等、特区内で講じられている優遇措置の減免期間延長、第三に投資家の視点に立ったアフターケアが必要である。

■ 朝田委員長に対するプーチン大統領の回答

朝田委員長の要望に回答するプーチン大統領(提供:SPIEF HP)

ウラジオストク自由港やTORで講じられている一連の優遇措置の減免期間は、経済発展省と財務省の間の議論の結果、決定したものである。ただし、投資額が大きい場合、回収に時間を要することは理解している。減免期間の延長を検討する余地はあり、本日同席しているオレシュキン経済発展相も含め、ロシア政府として検討したい。

■ 主な成果と今後の取り組み

今年3月の大統領選で4選を果たし(任期24年5月まで)、新内閣を発足させたばかりのプーチン大統領に対し、極東をゲートウエーとした日露のwin-winビジネスの実現に向けた経団連の要望を具体的に直接訴求できた意義は大きい。

経団連としては、日本で11月に開催予定の第15回日本ロシア経済合同会議等を通じて、今後とも8項目の「協力プラン」の実現に積極的に協力するとともに、ロシアにおけるビジネス環境の改善を働きかけていく。

(注1)http://www.keidanren.or.jp/policy/2015/113.html

(注2)http://www.keidanren.or.jp/journal/times/2016/0616_01.html

(注3)http://www.keidanren.or.jp/journal/times/2017/1214_06.html

(注4)2016年5月にロシア・ソチで開催された日露首脳会談において、安倍首相からプーチン大統領に提示された、8項目から成る協力プラン((1)健康寿命の伸長 (2)快適・清潔で住みやすく、活動しやすい都市づくり (3)中小企業交流・協力の抜本的拡大 (4)エネルギー (5)ロシアの産業多様化・生産性向上 (6)極東の産業振興・輸出基地化 (7)先端技術協力 (8)人的交流の抜本的拡大)

【国際経済本部】