Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年6月28日 No.3367  第107回ILO総会に代表団を派遣

日本使用者を代表して演説する得丸部会長

ILO(国際労働機関)の第107回総会が5月28日から6月8日まで、スイス・ジュネーブのILO本部・国連欧州本部で開催された。日本からは、牧原秀樹厚生労働副大臣、逢見直人連合会長代行、得丸洋経団連雇用政策委員会国際労働部会長がそれぞれ政労使の代表として参加した。

■ 総会議題

今回の総会では、職場における暴力とハラスメント防止に関する条約ならびに勧告の策定が中心的な議題であった。

本件については、2016年開催のILO専門家会合において、職場における暴力とハラスメントが、人間関係、健康、生産性等に悪影響を与え、「働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)」に反することで一致し、今回のILO総会において具体策が議論されることとなった。

使用者側と米国、ロシア等は、各国における取り組み状況の違いを考慮し、法的拘束力のない勧告の策定にとどめるべきであると主張。しかし、労働者側、欧州、アフリカ諸国、中南米諸国、韓国等、多数の加盟国の主張により、条約とこれを補完する勧告の双方を策定することが決定した。

他方、わが国では、今年3月に労使関係者、有識者等が参加する「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」において、パワハラ防止に向けた報告書が取りまとめられ、今後、労働政策審議会で具体的な内容について検討することが適当とされた。

今般ILO総会で議論された条約と勧告案では、「合理的または実施可能な範囲でハラスメント防止のための国内法と規則を制定する」という文言が含まれているが、かかる文言が、今後わが国内で行われる議論を予断することのないよう、適切な対応が求められる。

また、条約と勧告案では、ハラスメントの被害者・加害者として、顧客等の第三者も含まれ得るとしており、上記検討会報告書よりもその範囲が広汎である等の課題もあり、国内における議論との整合性を図ることが不可欠である。

条約と勧告の策定に関する議論は来年のILO総会でも引き続き行われる予定であり、国内における議論を踏まえ、対応していく。

■ 代表演説

6月4日、得丸部会長が日本の使用者の立場から代表演説を行った。概要は次のとおり。

現在、国会で「働き方改革関連法案」が審議されており、改正法のもとでは、残業時間の上限規制等が導入される。経団連では、会員企業に対して労働時間の削減と有給休暇取得に関する「働き方改革アクションプラン」の設定を呼びかけ、200社以上がこれに応じるなど、すでに取り組みに着手している。

また、「同一労働同一賃金」に関する規定も改定される。日本の経済界は、正社員と非正規社員との間の不合理な差別をなくし、仮に差がある場合は、その理由について説明責任を果たすことで、改正法に対応していく。

なお、職場における暴力とハラスメントの防止に関する条約と勧告については、各加盟国が国内法との整合性を確保しながら実施できるよう、柔軟な枠組みとすることが求められる。

【労働法制本部】