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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年7月26日 No.3371 Society 5.0時代の医療・ヘルスケアについて日本医師会と意見交換 -産業界と医療界の連携に向けて

経団連は7月10日、都内で、山西健一郎未来産業・技術委員長、畑中好彦未来産業・技術委員長らと日本医師会との意見交換会を開催した。経団連が今年3月に公表した提言「Society 5.0時代のヘルスケア」および提言に示した具体的な将来像を説明し、互いの認識や連携の可能性を議論した。

冒頭、日本医師会の横倉義武会長から、「今期の執行部では、かかりつけ医を中心とした『街づくり』、医療政策をリードする『組織づくり』、若い医師を中心とした『人づくり』を基本方針としている。経団連とはさまざまな機会を通じて連携してきたが、本日も率直な意見交換を行いたい」とのあいさつがあった。

続いて、山西委員長が、「Society 5.0は、『人中心の社会』と定義される。最先端技術を駆使してこれまで治せなかった病気を治したり、病気になる前から予防したりすることにより、健康寿命を延ばせるようになる。日本が直面する社会課題の解決につながるうえ、日本発のヘルスケアモデルとして海外展開し、国連が採択したSDGsの達成にも貢献できる。今回の意見交換が、両者の連携を深める契機になることを期待する」とあいさつした後、事務局から提言の概要を説明した。

その後、理化学研究所の桜田一洋副プログラムディレクターが「メディカルブロックチェーン」について説明。「Society 4.0の世界は、とにかくデータを集め、集めた後で何に使えるかを考えていた。Society 5.0では患者、医師にとってのデータの価値を考えてから、必要なデータを集める。集めたデータをブロックチェーンで管理することで、セキュリティーを担保したうえで、患者と医師の自己決定に基づくデータの利活用が可能になる」とし、「産業界と医療界が連携し、医療に最適なブロックチェーンの仕組みを設計する必要がある。例えば、個人のデータをかかりつけ医に預けることで、かかりつけ医が予防医療サービスを行えるようになる。地域医療を技術的にバックアップできる」と医療界との連携の重要性を強調した。

続いて、東レの杉原宏和主幹が「ウェアラブルデバイスによるヘルスケアサービス」について説明。「NTTと東レが共同開発したセンシングファブリック "hitoe®" を医療用途に使う。肌への負担も少なく、これまでより長期かつ精密に生体電気信号の収集が可能になる」「今後は高齢者・心疾患患者の在宅モニタリングやリハビリテーションへの応用が期待される」と実演を交えて紹介した。ヘルスケア、医療のデジタル化に向けては、「さまざまな取り組みが必要だが、患者、産業界、医療界、それぞれのステークホルダーには得手・不得手がある。それぞれの連携が不可欠だ」とした。

その後の自由討議では、両団体が継続して連携していくことの重要性が確認され、横倉会長から「Society 5.0に向けた進歩が著しいことがわかった。国民も変化を求めている。新しい技術を医療現場に入れる時、多くの医師には抵抗感がある。安全性の担保や説明責任を果たすことで、抵抗感をクリアしていきたい」とのコメントがあった。

最後に、畑中委員長が、「ヘルスケア分野はデータの宝庫。新しい技術との親和性も高い。うまくマネージすることで超高齢社会の課題を解決できる。横倉会長とともに、Society 5.0時代のヘルスケアの世界への発信に向け、産学官医で密接に連携していきたい」と総括した。

【産業技術本部】

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