Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年8月9日 No.3373  2018年版「ものづくり白書」の概要と製造業が持つべき危機感について聞く -産業競争力強化委員会

経団連の産業競争力強化委員会(進藤孝生委員長、岡藤正広委員長)では、経済産業省との検討会を立ち上げた。同検討会は、激動する国内外の事業環境において、産業構造の変化に対応するため、経営者が持つべき危機感を産官で共有し、必要な施策等について議論を行い、政策に反映させることを目的としている。

7月27日、その第1回会合を開催し、内閣府の多田明弘政策統括官(前経済産業省製造産業局長)から「2018年版ものづくり白書」の概要について説明を聞くとともに、意見交換を行った。概要は次のとおり。

■ わが国製造業が直面する主要課題

いわゆる「六重苦」解消に向けた取り組みの多くが進展し、企業業績は足元、今後の見通しともに拡大基調にある。しかし、急速なデジタル化の進展等に伴い、製造業は大規模な変革期を迎え、大きく4つの危機に直面している。第1は人手不足である。現場を支える人材はもとより、システム思考で物事を総合的にとらえる人材が不足している。第2は従来の「強み」が変革の足かせになる可能性である。例えば、自前主義やすり合わせ重視、品質への過信などは弱みにもなり得る。第3は経済社会の大変革期に関する認識である。デジタル化の動きとその影響を中長期の視座から考える必要がある。第4は非連続な変革への対応である。ボトムアップ経営や自前主義の限界を見極め、本質的な変革に取り組まなければならない。

こうした危機感のなか、重要なことは、現場レベルにとどまらない、経営におけるデータの利活用である。付加価値が「モノ」の生産から「サービス・ソリューション」へと移行しつつある今こそ、経営者が主導し、環境変化に対応した新たな付加価値の創出を推進しなければならない。あわせて、先進ツールを駆使した現場力の維持・強化、デジタル人材の育成・確保に取り組むべきである。

■ 人材の育成・確保の重要性

人材確保については多くの課題がある。特にデジタル人材が質量ともに逼迫するなか、その必要性を認識しない企業も一定割合存在することを深刻に受け止めている。人手不足が一段と進むなか、わが国製造業が国際競争を勝ち抜くため、経営者には一層の取り組みが求められる。ロボットやIoT等により省力化を図るとともに、人材を付加価値の高い仕事に投入していく。また、これまで培われた技能や知見を体系化・デジタル化し、組織の共有知として活用していく。デジタル時代の現場力を再構築する経営力が重要になっている。

■ Society 5.0の実現とコネクテッド・インダストリーズ

コネクテッド・インダストリーズは、Society 5.0が示す超スマート社会の実現に必要な産業の姿である。企業、業種を超えて多様な主体がつながることで、新たな付加価値の創出や生産性向上を追求し、高齢化や人手不足などの社会問題の解決を図る。そのうえで、国際競争力強化や国民生活の向上を目指す。5つの重点取り組み分野のいくつかについて、すでに産官学による議論を開始している。今後は、大企業はもちろん、中小企業の意識改革を促し、全体を底上げしていくことも重要である。

<意見交換>

出席者からは、日本に製造業を残すカギは頭脳であり、次世代のデジタル人材の育成に向けて、産学連携を含む大学教育が重要との指摘がなされた。また、政府に対しては、Society 5.0やコネクテッド・インダストリーズを推進するにあたり、司令塔的役割を果たすよう期待が示されるなど、活発な意見交換が行われた。

【産業政策本部】