Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年8月30日 No.3374  最先端技術を活用した物流効率化に向けた企業の取り組み聞く -運輸委員会物流部会

説明する秋葉氏(左)と河田氏

経団連の運輸委員会物流部会(坂元誠部会長)は8月1日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、ダイワロジテックの秋葉淳一社長、エヌ・ティ・ティ・データの河田禅部長から、最先端技術を活用した物流効率化の取り組みについて説明を受けるとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ ダイワロジテック「物流施設における先進技術の活用」

当社では、物流現場で人が行う仕事を技術で置き換え、ビジネスを成立させるためさまざまな試みを進めている。

物流施設でロボットを使う際、重要なのは手と腕の代替機能だ。ロボットの手を日本が得意とする産業機械として製作するには、特に高い精度が求められる。そこで、米国のロボット企業は発想を転換し、シリコン製の手に空気を出し入れし、物の形状に応じて自在につかめるソフトロボットハンドを開発。食品工場等で導入されている。また、商材をレール上で自動搬送し、RFIDも活用して入力、ピッキング、格納、配送等の一連の作業をほぼ100%自動化している例もある。さらに、倉庫内で人が動くのではなく、棚が作業員の前に移動し各種作業を行う装置については、世界最大のeコマース企業が世界で約10万台導入し、全商品の6割を処理しているようだ。ほかにジャングルジム型など、世界ではさまざまなロボットや装置が開発されており、各社はこれらを荷物の特性や出荷頻度に基づき選択し、運用している。保管効率の向上と作業人員の削減の効果により、こうした投資の回収は十分可能とみている。

その一方で、ロボットではまだ人間の目の代わりができない。特に横方向の奥行きを認識することが苦手であり、今後の技術進歩が待たれる。

■ エヌ・ティ・ティ・データ
「ブロックチェーン技術を活用した貿易情報連携基盤の実現に向けた取り組み」

貿易には銀行、輸出者・輸入者、運輸会社・通関会社、保険会社等、多様なプレーヤーが関わっている。各社は優れた企業内システムを開発し、貿易書類の電子化を進める一方、企業間ではいまだにメールやファクシミリ等で書類をやりとりしていることも多く、貿易手続円滑化の阻害要因となっている。こうしたなか、情報の改ざんが困難で、中央集権的ではないシステム運営といった特徴を持つブロックチェーン技術が登場。これを貿易手続の効率化に応用しようと取り組んでいる。

当社では、2016年から銀行や保険会社と共同で、信用状や保険証券を電子化する実証実験を実施し、データ転記の手間をなくすなど大幅な業務削減効果を確認した。17年8月には、主要な金融機関、荷主、物流事業者の参画を得て、貿易情報連携基盤の実現に向けたコンソーシアムを結成し、業界横断的な検討と実証実験を進めている。

今後の課題は、船荷証券の電子化に向けた制度整備、海外当局との国レベルでの連携であり、同コンソーシアムでは税関等をはじめとする行政機関等や政府などに働きかけている。各国で同様の取り組みが展開されており、デファクトを取られぬよう、日本も官民で連携のうえ、スピードを上げて取り組まなければならない。

ブロックチェーンは、既存のシステムをすべて置き換えるような技術ではないが、新たな領域における課題解決が可能になる。同コンソーシアムの取り組みは日本の貿易実務の効率化の観点から重要であり、引き続き、さまざまな関係者の協力を得ながら、実現に向けて注力していきたい。

【産業政策本部】