Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年9月20日 No.3377  「平成31年度税制改正に関する提言」を公表 -Society 5.0の実現に向けイノベーションを促進

経団連(中西宏明会長)は9月18日、「平成31年度税制改正に関する提言」を公表した。

今回の提言の基本的な考えは、日本経済がデフレから完全に脱却し、GDP600兆円経済に向けて飛躍するために、税制や規制等の諸改革の政策を総動員してSociety 5.0を実現し、社会全体でイノベーションを起こし、生産性を向上させることにある。

1.Society 5.0を本格的に実現する税制措置の整備

主要先進国における法人実効税率の引き下げを踏まえ、法人実効税率については早期に25%を目指すとしたうえで、Society 5.0の実現に向け、イノベーションを促進する観点から、研究開発税制を抜本的に拡充することを求めた。

具体的には、総額型について控除上限を法人税額の25%から30%へと引き上げるとともに、期限切れを迎える控除率10~14%の部分の延長・拡充、総額型の試験研究費割合10%超の場合の上乗せ措置および高水準型の延長等、さらに、オープンイノベーション型やサービス開発にかかる研究開発の要件緩和等を求めた。また、労働生産性の向上に資する税務分野におけるデジタライゼーションを推進する観点から、税務関係書類の電子化・書式統一や電子帳簿保存法の要件緩和を要望した。

2.消費税、自動車関係諸税および住宅・土地・都市税制

2019年10月の消費税率の引き上げについては確実に実現すべきとした。また、消費税率引き上げの際には、「骨太の方針2018」にもあるとおり、需要平準化のために万全の対策を講じる必要がある。

自動車に関しては通商問題も深刻化するなかで、需要変動の平準化にとどまらない抜本的な改革が必要であり、自動車税を軽自動車税の水準を起点として引き下げるとともに、取得時の税についても現行の税負担より十分な軽減を図ることを求めた。また、住宅税制では、駆け込み・反動減の平準化のため、予算措置とともに、住宅ローン減税、住宅取得資金等の贈与特例の拡充等を措置すべきとした。あわせて、平準化対策とは別に、都市再生促進税制など、期限切れを迎える租税特別措置について延長・拡充を求めた。

3.国際課税の諸課題

国際課税の関係では、米国連邦法人税率の35%から21%への引き下げにより、米国に所在する子会社等が外国子会社合算税制により合算課税されるおそれがある。このため、パススルー事業体(注)と構成員を一体として判定する仕組みなど、必要な見直しを求めた。

また、OECDのBEPS勧告を踏まえた国内法制化に関しては、利子控除制限について、BEPS最終報告書を踏まえた見直しがなされれば、海外展開を積極的に行っている企業やM&Aなどで借入金が多い企業を中心に、大きな影響が生じる可能性がある。あわせて、知的財産の国外譲渡にかかるいわゆる所得相応性基準についても後知恵課税という懸念がある。このため、それぞれの制度について適用される局面を限定するなど、企業行動に影響が生じないよう求めた。

4.法人課税の諸課題

法人課税では、業績連動給与における適正手続要件の緩和や、組織再編税制の見直し、償却資産にかかる固定資産税の抜本的見直し、印紙税の廃止・負担軽減を求めた。

加えて、提言では、地球温暖化対策税の廃止を含む抜本的な見直し、NISA(少額投資非課税制度)の投資可能期間および非課税保有期間の恒久化等についても要望した。

(注)パススルー事業体=その所得および納税義務が自らにではなく直接、構成員に帰属する事業体。米国における有限責任会社(LLC)や投資事業有限責任組合(LPS)など

【経済基盤本部】