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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年9月20日 No.3377 次期年金制度改革に向けた論点を聞く -厚生労働省年金局の伊澤年金課長から/社会保障委員会年金改革部会

経団連は9月5日、東京・大手町の経団連会館で社会保障委員会年金改革部会(牧原晋部会長)を開催し、厚生労働省年金局の伊澤知法年金課長から、社会保障審議会年金部会で検討が進められている年金制度改革の議論に関連し、今後の論点などについて聞いた。概要は次のとおり。

■ 年金制度の長期的な財政の枠組み

現行の公的年金制度は平成16年制度改正により、2017年度以降の保険料水準の上限が設定され、概ね100年の総収入が固定されるとともに、その収入の範囲内で給付を調整するマクロ経済スライドが導入された。マクロ経済スライドは、平均余命の伸びと労働力人口の減少に基づき、財政的に均衡するまで、現在と将来の受給世代の給付のバランスを自動的に調整する仕組みである。具体的には所得代替率(モデル世帯における年金受給開始時点の年金額を、現役世代の手取り収入の平均額と比較したときの割合)を徐々に低下させる一方、将来世代の給付の原資を確保することで、世代間のバランスをとることとなっている。

■ マクロ経済スライドと年金財政をめぐる課題

14年の財政検証結果では、マクロ経済スライドの発動が15年のみであるにもかかわらず、調整終了後の所得代替率は当初の想定より上昇している。これは60歳以降の厚生年金被保険者が想定よりも減少しなかったことなどのプラス要因により、足元の年金財政が好転していることによる。

他方、賃金が低下するなか、同じ割合で年金額を下げられなかったことにより、現在の受給者の所得代替率の上昇を招いている。このため、特に基礎年金の調整期間が長期化し、将来世代の基礎年金給付水準の低下を招くという課題も明らかとなった。とりわけ、基礎年金による再分配により、所得代替率が高くなる設計の低所得者ほどこの影響を受ける状況となっている。

■ 短時間労働者への適用拡大

16年10月から、501人以上の企業で、月収8.8万円以上等の要件を満たす短時間労働者へ被用者保険の適用拡大が行われ、約36万人が新たに対象となった。適用拡大後1年の短時間被保険者の標準報酬月額分布をみると、10.4万円以下が減少する一方、11.0万円以上が増加しており、適用拡大の効果が確認されている。こうした状況も踏まえつつ平成24年改正法(「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」)に基づき来年9月までにさらなる適用拡大について検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずることとされている。

■ 高齢者の就労促進と年金の制度

働く意欲のある高齢者にとって、将来の年金を増やすというインセンティブを感じながら、働くことと年金を受給することの最適な組み合わせを選択してもらう観点からも検討する必要がある。例えば、在職老齢年金のあり方についても議論を行っていくことが想定される。なお、60~65歳までの在職老齢年金については、「報酬比例部分」の支給開始年齢の引き上げに伴い25年度以降は対象者がいなくなる点にも留意する必要がある。

社会保障審議会では当面、次期制度改革に向けて、こうした課題について検討を行う予定である。来年に入ってからは5年に一度の財政検証のもと、議論を深め、必要な制度改正に向けて取り組んでいく。

【経済政策本部】

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