Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年9月27日 No.3378  朝田日本ロシア経済委員長が東方経済フォーラムに参加 -ロシア政府にインフラ整備など要望

日露ビジネスラウンドテーブルで
スピーチする朝田委員長

経団連の朝田照男日本ロシア経済委員長は9月11日から13日にかけてロシア・ウラジオストクで開催された「東方経済フォーラム」に参加し、日露ビジネスラウンドテーブルで経団連を代表してスピーチを行った。

東方経済フォーラムは、ロシア極東開発を国家戦略の最重要課題の1つと位置づけるプーチン大統領の肝煎りで2015年に始まり、今年が4回目。

マクシム・オレシュキン経済発展大臣はじめ日露関係者約350名が参加したラウンドテーブルでの朝田委員長スピーチの概要と主な成果は次のとおり。

■ 朝田委員長スピーチ

 ロシア政府の投資誘致政策に対する評価等

8項目の「協力プラン」(注)のなかでも、日本企業が特に注視している極東。経済特区やウラジオストク自由港などさまざまな投資誘致策が講じられているが、日本企業の利用率は依然として低い。経団連が昨日(9月11日)公表したロシア・ビジネスに関するアンケート結果によれば、自由港等の投資誘致制度を「よく知っている」と回答した日本企業は2割前後で、大半はほとんど認知していない。

ロシアの投資優遇策の課題や問題点に関しては、圧倒的多数が「正確で客観的な情報が不足している」と回答したほか、「投資に対する十分なリターンが見込めない」「成功例をほとんど知らない」といった意見も多い。

経団連でも、日本企業がロシアに抱いているステレオタイプを払拭すべく、今年3月に企業向け説明会を開催するなど、積極的に活動しているものの、日本企業の間で十分な理解は得られていない。ロシア政府には、これらも踏まえ、まず投資家に対する丁寧な周知・広報とともに、特に次に挙げる3つの施策を講じてほしい。

 ロシア政府への要望

  1. インフラ整備
    内陸輸送の貨車不足や貨物停滞に伴う船積み遅延等により、ロシア全土の貨物を極東に収集するのが困難なほか、港の保管設備や貨物のハンドリング能力が不足している。PPP(官民パートナーシップ)の導入等、外資を含む官民一体の輸送物流システムの思い切った整備をお願いしたい。

  2. 特区内の優遇措置(法人税や固定資産税等)の減免期間の延長
    現状、概ね5年間の優遇期間は、日本の製造業の一般的なリードタイムと比べて短く、投資インセンティブとして不十分である。特区の使い勝手や予見可能性を高める観点からも、抜本的な措置を要望する。

  3. 投資後のアフターケア
    例えば投資後、極東発展省が入居企業を訪問し、投資家とともに問題を解決するなど、きめ細かなメカニズムが必要である。こうした地道な取り組みの積み重ねによって、極東への投資が拡大していくものと期待している。

■ 主な成果と今後の取り組み

朝田委員長の発言を受け、オレシュキン経済発展大臣は「提起された課題の即時解決は困難であるが、一歩一歩前進したい。情報提供の不足は、新規投資を検討している企業にとって大きな問題。何らかのメカニズムをつくりたい」と回答した

経団連としては、第15回日本ロシア経済合同会議(11月19日、東京)等を通じて、今後とも8項目の「協力プラン」の実現に積極的に協力するとともに、ロシアのビジネス環境の改善を引き続き働きかけていく。

日露関係者約350名が参加したラウンドテーブル(出典:Roscongress Foundation)

(注)「8項目からなる協力プラン」=2016年5月6日にソチで開催された日露首脳会談において、安倍総理からプーチン大統領に提示された。(1)健康寿命の伸長 (2)快適・清潔で住みやすく、活動しやすい都市づくり (3)中小企業交流・協力の抜本的拡大 (4)エネルギー (5)ロシアの産業多様化・生産性向上 (6)極東の産業振興・輸出基地化 (7)先端技術協力 (8)人的交流の抜本的拡大

【国際経済本部】