Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年10月4日 No.3379  瀬口キヤノングローバル戦略研究所研究主幹との懇談会を開催 -ワシントン・リポート<48>

経団連米国事務所は9月21日、キヤノングローバル戦略研究所の瀬口清之研究主幹との懇談会を開催し、トランプ・習政権時代の日米中関係について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 中国経済の現状と中長期展望

足もとの中国経済は、中国が市場経済に移行し始めた1990年代以来、最も安定した状態にある。しかし、米中間の貿易摩擦の激化は、景気下押しリスク要因である。トランプ政権は、貿易摩擦を中間選挙向けプロパガンダに利用する一方、実際問題として中国による技術の強制移転に伴う競争力強化を懸念している。他方で、米中両国は経済的に相互依存関係を深めており、仮に米国製品の不買運動や米国による金融為替制裁、貿易投資の禁止的制限など経済全面戦争に突入すれば、双方が極めて深刻な打撃を受ける関係にある。それと同時に、新興国等において金融・為替危機が生じるリスクにも注意が必要である。

中長期的にみると、中国経済は2020年代半ばに高度成長期から安定成長期へ移行し、20年代後半には先進国の仲間入りをする見通しだが、以降40年までの間に景気後退に直面する可能性が高い。産業競争力・輸出競争力の低下に伴う双子の赤字拡大、少子高齢化の加速による財政負担の増大、不動産価格の下落と不良債権の増大などがリスク要因として考えられる。共産党一党支配体制はイデオロギーではなく経済成長によって支持されていることから、習政権は「中国製造2025」等の構造政策の実行により経済の中長期的安定を確保する必要があり、金融リスクの防止、貧困からの脱却、環境改善を政策課題として掲げて今の経済が安定している間に改革の実現を図ろうとしている。

■ 日本企業の経営課題

今年に入ってから日中関係は改善傾向にある。習政権の対外開放のより一層の推進、米中貿易摩擦の激化への対応、日本企業による技術協力への期待といった中国政府の政策方針を背景に中国は日本企業を積極的に誘致し、日本企業も対中ビジネスを加速している。欧米諸国は、中国企業の競争力向上や技術流出、企業買収を懸念し対中投資に慎重な姿勢を示しているが、日本企業は長年技術の強制移転に対応し、基礎技術でも優位に立つ自信があることなどを背景に、日中両国の関係改善をビジネスチャンスととらえている。

今後、日本企業が中国ビジネスを一層発展させていくためには、マーケティング力や研究開発力の強化が不可欠であり、それらを備えた企業へと抜本的に経営組織を転換させるには社長任期の長期化が必要となる。経営層がグローバルマインドを備える重要性は中国市場の開拓でもシリコンバレーにおける新規事業開発の成功でも共通している。すなわち、市場ニーズの理解、重要な経営判断を自ら行う能力の醸成、ハイレベル人脈の開拓等を通じてグローバル化時代の新たな経営課題を克服する抜本的改革を実行するには、社長として10年以上の任期が必要であると考えられる。

【米国事務所】