Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年10月11日 No.3380  ユニバーサル社会のあり方について議論 -竹中工務店と三越伊勢丹ホールディングスの取り組みを紹介/生活サービス委員会ユニバーサル社会部会

経団連は9月27日、東京・大手町の経団連会館で生活サービス委員会ユニバーサル社会部会(河本宏子部会長)を開催し、竹中工務店技術本部技術企画部の石川敦雄副部長ならびに三越伊勢丹ホールディングス総務部の滝沢勝則総務・法務ディビジョン長から、両社の取り組み事例について聞くとともに、懇談した。説明の概要は次のとおり。

■ 竹中工務店
「生きる場所をつくる『健築』―誰もが過ごす“場所”がもたらす価値」

竹中工務店では「誰もが安心して快適にいられる美しい建築・環境デザインを、常に改良を図りながら創造しつづける」との基本理念のもと、建築・まちづくりにおいてユニバーサルデザインを実践している。特に、建築やまちは長い時間をかけて人の生活機能に影響を及ぼすことを踏まえ、誰もが健やかで心豊かに生きていける場所としての「健築」を目指している。

具体的には、千葉大学予防医学センターに「健康な空間・まちづくり」を産学で研究する国内初の拠点を設け、エビデンス・ベースの「空間デザイン」、生活行動を促進する「プログラム」の提供、効果をフィードバックする「分析・評価」の3つのプロセスを継続的に実施している。また、さまざまな企業と連携し、身体活動や反応を促し、感性に響く場所づくりも行っている。例えば、イオンモール宮崎では、楽しみながら健康への気づきが得られるよう、効果音や童謡が流れる階段を設置して利用を促す、あるいは歩行年齢測定システムを設置して、歩行の姿勢やバランス等を知ることができるようにしている。

こうした健康に資するまちづくりは1社だけでは達成できない。各社と連携し、さまざまな知見や技術を組み合わせて進めていきたい。

■ 三越伊勢丹ホールディングス
「百貨店におけるユニバーサルデザイン~三越伊勢丹の取り組み」

百貨店におけるユニバーサル対応の対象は広く、お客さまだけではなく、従業員、取組先等と多岐に及ぶ。また、対応を求める方々も高齢者、子ども、障がい者、外国人、LGBT等と多様である。このため、ハード面の整備だけでは限界があり、コミュニケーションも含めたソフト面での取り組みを重視している。

具体的には、「ユニバーサルマナーハンドブック」を作成、従業員研修で活用し、サービス向上につなげている。例えば、カード払いの代筆、高齢のお客さまに家族から商品を販売しないように要請があった場合の対応等、店頭で生じ得るさまざまなケースへの対応策を実例で示すことで、ユニバーサルな顧客サービスの均一化を図っている。なお、当該取り組みは日本百貨店協会と連動し、全国の百貨店の取り組みに発展しつつある。

こうしたソフト面の取り組みに加え、「三越伊勢丹ソレイユ」という特例子会社を設立している。重度の知的障がい者の高度な反復能力を活かし、ギフト用のリボンづくり等を委託することで、現場の作業が効率化され、接客への時間を増やすことができるようになるなど、店頭部門の生産性向上にも貢献している。

【産業政策本部】