Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年11月1日 No.3383  中西会長記者会見

経団連の中西宏明会長は10月24日、東京・大手町の経団連会館で記者会見を行った。

中西会長は、政府が経済情勢や景気への配慮はもちろん、日本の給与水準が国際的にみても低く、もう少し上げるべきとの考えを示し、経済界も概ね同様の考え方で自ら取り組んでいることに触れ、これを官製春闘と言うのはおかしいと指摘。マクロレベルでどのくらい賃上げが必要か示す必要があれば議論したいとした。

また、すでに賃上げは業界横並びでなくなっており、連合もベアの水準だけでなく、さまざまな観点から要求を検討していると指摘。意欲ある社員が報われる処遇のあり方を経営側が検討するなか、連合もそれに対応する意見を要望してくるのではとの見解を示した。

政府が打ち出した外国人材受け入れのための新たな在留資格の創設については、経団連の意見がかなり反映されるかたちで制度設計が進んでいると評価。現実に多くの外国人が日本で働いていることについては、政府だけでなく地方自治体、企業も問われており、わが国にとってよい制度にできるかどうかは、この点をしっかり議論できるかにかかっていると述べた。

受け入れ対象分野の検討にあたっては、まず活躍の場があるかが重要と指摘。また、人手不足の業界は外国人材の受け入れを要望しており、そうした分野から万全の態勢を整えていくべきとした。そのうえで、一律に議論することは難しく、業種ごとに受け入れに向けた課題の解決を議論していくことも今回の法改正の趣旨との見解を示した。さらに、「まずは仮説を立てて制度をつくり、試行しながら改善していく」くらいのスピード感で取り組まないと物事は変わらない強調した。他方、産業競争力を高める観点からは、国際的な人材獲得競争を勝ち抜き、高度人材を獲得できるかがカギと指摘。働く人の立場に立って、外国人にとって働きやすい国となるよう環境整備していくことが重要との認識を示した。

消費税については、まず10%へと引き上げることが最優先課題と強調。8%に引き上げた時のことを考えると、経済対策の実施に反対ではないとしつつ、消費増税は財政健全化に資するものでなければならないと述べた。キャッシュレス決済の活用やプレミアム商品券の発行など、多くの対策を混在させるのは実施側の負担もあり、政府・与党の議論に経団連も全面的に協力していくとした。

日米財界人会議については、民間同士の対話は非常に重要と指摘。通商問題にしても、社会格差や産業構造など当該国の経済社会の構造が反映されており、そうした経済社会のありよう、方向性を含めて議論をすることは有意義だとした。

また日中関係について、中国が新常態を打ち出し、拡大成長路線から質の高い経済成長へと舵を切ったことで新たな発展段階に入り、新しいマーケットが拓かれることへの期待があると指摘。中国では大量生産型の成長モデルでなく、新しい付加価値を生む産業の育成が重要となっており、相互補完的なウィンウィンの日中関係を築いていきたいとの考えを示した。

将来を見通した経済協力について話し合うことは日中双方にとって有益であり、さらなる日中関係の強化に向け、政府、経済界がそれぞれの役割を果たしていくことが重要との認識を示した。

【広報本部】