Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年11月8日 No.3384  新公益法人制度の現状と課題について意見交換 -社会貢献担当者懇談会

説明する雨宮公益法人協会理事長

経団連は10月11日、東京・大手町の経団連会館で社会貢献担当者懇談会(山ノ川実夏座長、岩﨑三枝子座長)を開催した。新公益法人制度が施行されて10年を迎えるなか、その現状と課題について公益法人協会の雨宮孝子理事長から説明を受けるとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 公益法人の現状

公益法人による公益目的事業の年間支出総額は4.5兆円超で、大阪府の一般会計に相当する。常勤の役職員数は約21万人、資産規模は約27兆円に上る。

団体を22の公益目的事業分野別にみると、地域社会の健全な発展、児童・青少年育成などが多く、NPO法人と傾向が類似している。

企業財団のなかには、企業本体の活動と内容が重なり、同じ執務室内で活動しているところもあるが、公益認定を受けるのであればガバナンスの観点から執務場所は区別した方がいい。ただ、企業と企業財団が連携して活動し、成果を発信することには意味がある。

■ 公益法人改革による変化

主務官庁制の廃止により団体が行える活動の幅は膨らんだが、税制優遇の対象となる公益目的事業の内容変更の認定は簡単には受けられない。社会が求めるものが変化するなか、もう少し自由度があってもよいだろう。

また、ガバナンスを担保する仕組みや情報開示制度が整ったことで、団体情報を確認しやすくなった。さらに、団体、寄付者双方に対する税制優遇は比較的充実した。

■ 収支相償・遊休財産規制・公益目的事業比率の問題点

制度拡充にもかかわらず、新規に公益認定を受ける法人が年間約90団体にとどまるのは、(1)公益目的事業では費用を超える収入を得てはいけない収支相償原則(2)公益目的事業等に使われない財産を年間事業費以上に保有できない遊休財産規制(3)公益目的事業は法人事業全体の50%以上とする公益目的事業比率規制――があるからだ。その結果、自由度が高い一般法人を選ぶ団体も少なくない。

特に収支相償原則においては、主に2つの問題がある。1つは、収支相償という言葉の意味が不明確であることだ。もともと収支相償とは、旧日本開発銀行の融資業務において、受け取る利子は融資にかかわる諸費用を償う程度にするという意味で使用されていたものである。

もう1つは、寄付金収入が公益目的事業の収入として算入されることだ。寄付が急増すると原則として年度内に費消せねばならない。収支相償の判定では事業で得られる収入と事業の経費支出のみを比較すべきである。これは多くの法人が苦労している制度で、撤廃を求めたい。

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現在の公益法人制度は、旧制度より自由度が高い仕組みになったものの、活力ある団体の創出にはつながっていない。公益法人は、持続可能な開発目標(SDGs)達成への取り組みなど、より意欲的な活動の担い手となるべきであり、それを支える制度を期待する。

【SDGs本部】