Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年11月15日 No.3385  今後の農業政策をめぐり農林水産省幹部と懇談 -農業活性化委員会

提言を手交する十倉委員長(左から3人目)、佐藤委員長(同2人目)

経団連は10月29日、都内で農業活性化委員会(十倉雅和委員長、佐藤康博委員長)を開催し、末松広行事務次官ら農林水産省幹部と農業の先端・成長産業化に向けた施策をめぐり懇談した。会合に先立ち、十倉・佐藤両委員長から、9月に公表した提言「農業 先端・成長産業化の未来―Society 5.0の実現に向けた施策」を末松次官に手交し、提言事項の実現を強く訴えかけた。

懇談会では、冒頭、末松次官があいさつ。「農業は日本経済全体と比べると産業規模が小さいというが、見方を変えれば、新しいことに取り組みやすく、その成果を他分野にも展開できる可能性がある。農業のイノベーションに向けて技術開発をはじめ改革を進めていく」と意欲を示した。

続いて、農水省の大澤誠経営局長が、農地制度をはじめとする法制度の見直しや担い手の確保に向けた施策について説明。「継続的に農業経営を行う意欲ある企業の参入や農地集積が確実に進展している」と現状を説明したうえで、さらなる改革ということで、「今年度より、相続未登記農地の農地中間管理機構への貸し付けを可能としたほか、底面がコンクリートで覆われた農業用施設を農地転用の許可なく農地に設置できるようにする等の施策を展開する。さらに、外国人材の受け入れ推進等、農業現場での人手不足解消、生産性向上にも注力する」とした。

次に、別所智博農林水産技術会議事務局長が先端技術の活用に向けた施策を紹介。「労働力不足への対応として技術革新は不可欠。『匠の技』と先端技術とを融合させた『スマート農業』の実現に向けて、ロボットトラクター等の自動化技術や熟練農業者のノウハウの形式知化、ドローンによるセンシング技術の活用等を促進する」とした。

また、19年4月から本格稼働が予定されている「農業データ連携基盤(WAGRI)」については、「現在提供されている生産に関するデータに加え、将来的に加工・流通・消費に関するデータにまで拡張した『スマートフードチェーンシステム』を構築したい」と説明した。そのほか、ゲノム編集を活用した品種開発やその規制の検討状況、「『知』の集積と活用の場」を活かした技術の海外展開についての取り組みを紹介した。

続く懇談では、佐藤委員長が「われわれが考える未来の農業の姿と方向性は一致しており、改革を進める決意を聞くことができ心強い」と農水省の政策に期待を寄せる一方、データの所有や使い方に関するルール整備の必要性を指摘。これに対し、末松次官はデータ基盤の整備について、引き続き先端的な姿勢で取り組んでいくと応えた。

最後に、十倉委員長は「構造改革とイノベーションの創出を通し、わが国農業の先端・成長産業化を真に実現すべく、今後とも官民の連携を強化していきたい」と締めくくった。

【産業政策本部】