Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年12月6日 No.3388  「最近の競争政策の動き」 -杉本公正取引委員会委員長が講演/経済法規委員会

杉本氏

経団連は11月13日、都内で経済法規委員会(永易克典委員長)を開催し、今年3月に再任された公正取引委員会の杉本和行委員長から、最近の競争政策の動きについて講演を聞き、意見交換した。講演の概要は次のとおり。

■ 競争政策の意義

独占禁止法は戦後、財閥の解体を前提に、経済の民主化を支える法律として制定された。その歴史は、カナダ、米国に次いで世界で3番目に古い。

日本経済が成熟化し、既存の財・サービスの需要が飽和するなか、経済成長のカギを握るのはイノベーションである。競争政策の現時点における重要な役割は、競争環境を確保することにより、イノベーションを促進することにある。

■ 競争政策の国際化

市場、サプライチェーンが国際化し、海外企業間での合併や買収等の国際的企業結合が行われている。同時に、競争法をもつ国・地域が2017年時点で120を超えるまでに広がるなか、国際標準による競争政策の実施が求められている。例えば、企業結合については、近時の長崎県の地方銀行の統合も含め、グローバルスタンダードに従って審査している。

国際化のもう1つの側面は、域外適用である。アメリカ、EUはじめ、当局が外国企業に対して競争法を適用するのが国際的な流れである。そうしたなかで、いくつかの事案を通じて日本企業の独占禁止法コンプライアンス意識の甘さが目立っており、企業においては、反競争的行為に対する世界的なリスクの高まりをしっかりと認識する必要がある。

国際化への対応という点では、TPP協定およびTPP11協定の締結に伴い、確約手続きを導入する。企業と当局が同じ方向を向いて競争法上の問題を早期に是正することに資するものであり、国際標準の手続きである。TPP11協定が発効する今年12月30日に施行される。

■ 経済のデジタル化と競争政策

近年、オンラインプラットフォームが急速に成長しており、その背景には、ビッグデータの事業活動への利用がある。ビッグデータが利用される場合、ネットワーク効果が増幅され、寡占が生じやすい。また、オンラインプラットフォーマーは事業規模を拡大しやすく、市場支配力が極めて強い事業者が相対的に出現しやすい。

こうしたオンラインプラットフォームは消費者に利益をもたらしているが、市場支配力を有するプラットフォーマーが、それを背景に、市場における競争を阻害するような行為に及ぶ場合には、独占禁止法上の問題となり得る。昨年6月の「データと競争政策に関する検討会」報告書に整理されているが、データの不当な囲い込みや不当なデータ収集、データの集積を伴う企業結合などについて問題意識を持っている。

なお、経済産業省、公正取引委員会および総務省は、「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」を開催し、取引実態の透明性の実現やデータの移転・開放ルールの検討など、デジタル・プラットフォーマーを取り巻く課題や対応について、論点を整理したところである。

【経済基盤本部】