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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年12月6日 No.3388 第26回「経団連 Power Up カレッジ」 -「ANAグループの『挑戦』のDNA」/ANAホールディングスの片野坂社長が講演

経団連事業サービス(中西宏明会長)は11月7日、東京・大手町の経団連会館で第26回「経団連 Power Up カレッジ」を開催し、ANAホールディングスの片野坂真哉社長から講演を聞いた。概要は次のとおり。

■ ANAグループ概要

当社は、1952年に「日本ヘリコプター」としてヘリコプター2機で創業してから、現在、飛行機約300機を運航するに至るまで、挑戦と成長を続けてきた。2017年度決算では、売上高1兆9717億円、営業利益1645億円を計上し、現在、社員約4万2000人を擁するまでに発展している。

■ ANAグループ安全理念

航空会社は、安全がすべてであり、当グループとして「安全は経営の基盤であり社会への責務である」という安全理念を掲げている。

1958年に下田沖、66年に羽田沖と松山沖で墜落事故が相次ぎ、71年には雫石で自衛隊機との衝突事故が発生した。いずれも乗客乗員の方が亡くなられた大変痛ましい事故であった。それ以降、当社では墜落・衝突事故は起こっていない。一般的に「失敗はたくさん経験しなさい」といわれるが、航空機事故は決して経験してはいけない。経験しないで社員に事故の悲惨さを伝えていくのは難しいが、伝え続けていかなければならない。私は入社式の冒頭で新入社員に必ず過去の事故の話をし、「安全がすべて」ということを彼らの胸に刻んでもらっている。

■ つなぐDNA

日本ヘリコプター初代社長の美土路昌一が唱えたスローガン「現在窮乏、将来有望」の精神は現在の経営にも根づいている。

86年の国際線進出、99年のスターアライアンス加盟は、社内外から批判的な意見があるなかで当時の経営トップが「太平洋でアメリカと戦えないのであれば、航空会社を続ける意味がない」「スターアライアンスに加盟することで当社の人材が大きく育つことになる」との強い信念を貫き実現させたものである。

このような経営トップによる挑戦と成長の志が今日までの成長・拡大につながっている。今後もこのDNAを受け継いでいきたい。

■ 未来に向かって挑戦

さまざまなイノベーションに挑戦してきたが、その過程で数々の失敗も経験した。「タッチパネルで機内食オーダー」導入の際には、お客さまが一斉にオーダーしたためうまく対応できず、「1日乗り放題運賃」を企画・販売した際には、欠航や大幅な遅延が発生し、予定地まで到達できないお客さまが出てしまった。これらの失敗から、新しいことを始めるには十分な事前準備・訓練が必要であるとの教訓を得た。

現在は、「乗ると元気になるヒコーキ」「アバター(自身の分身ロボット)による仮想体験」「宇宙旅行」等の実現に向けて挑戦している。

■ これからの経営者へ

座右の銘は、中国の三国時代の武将、曹操による詩の一節「志千里に在り(年老いた馬は納屋に繋がれていてもいつかまた草原を走る日を夢見ている)」である。

経営者として大切にすべきことを5つ伝えたい。

(1)社長が代わっても経営理念をきちんと受け継いでゆく(2)社員と意識・考え方を共有する時間を持つ(3)お客さまからの信頼を大切にする(4)読み難い未来に対する洞察力を磨く(5)心身の鍛錬を怠らない――ことである。

皆さんには自身を磨いてパワーアップしてほしい。それが会社の力になり、ひいては日本の社会、世界をよくする力にもなっていく。

【経団連事業サービス】

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