Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年12月13日 No.3389  「今後の採用と大学教育に関する提案」を公表 -多様で質の高い人材の育成に向けて

経団連(中西宏明会長)は12月4日、提言「今後の採用と大学教育に関する提案」を取りまとめた。

Society 5.0の実現には、より高度で多様な価値観や個性を持つ人材の育成が重要であり、そうした人材を生み出す大学教育への期待が高まっている。こうしたなか、10月に経団連が2021年度以降入社対象の「採用選考に関する指針」を策定しないことを決定したことを受けて、企業側は求める人材像をより明確化して発信する一方、大学側も時代の変化に適した大学教育のあり方を再検討する必要がある。

■ 新卒採用の現状と今後に向けた課題整理

提案ではまず、経団連主要会員企業からのヒアリングに基づく新卒採用の現状を示したうえで、今後の課題を整理した。例えば、新卒採用のあり方については、Society 5.0時代に適合した人材活用、評価・処遇を考察するなかで、さまざまな選考機会により、多様な人材を獲得することが求められる。そのため、卒業時期の異なる学生や留学経験者、外国人留学生などを対象に、夏季・秋季の採用・入社にも柔軟に対応する必要があるほか、専門的知識や技能を有する高度人材の採用にあたっては、今後、ジョブ型雇用の仕組みを構築するなかでの多様な選択肢の提示が必要だとしている。

また、企業が求める人材像を大学と共有し、学生に伝えていくため、キャリア教育や早い年次での長期インターンシップに取り組む企業の拡大が重要であるとしている。

■ 大学に期待される教育改革

次に、大学に期待される教育改革として、第1に、リベラルアーツと文理の枠を超えた基礎的リテラシー教育を求めている。情報科学や数学、歴史、哲学などの基礎科目を必修とし、全学生がこれらをリテラシーとして身につけられる教育を行うべきである。

第2に、大学教育の質保証が必要である。単位取得や成績・卒業要件の厳格な運用、少人数のゼミナール方式やPBL(課題解決型学習)型の授業など、主体性や説明能力の向上に資する授業への改革、成績評価方法の改革を求めている。

第3に、グローバル化の推進を求めている。海外留学の奨励や海外からの留学生受け入れの拡大などと同時に、外国人留学生の日本企業への就職支援を、政府・大学・企業のそれぞれが強化することも求めている。

第4に、比較可能なかたちでの大学に関する情報開示の拡充と、学修ポートフォリオなどを活用した、学生の学修成果の可視化を求めている。

そのほか、初年次におけるキャリア教育の実施やリカレント教育の拡充を求めている。

■ 大学と経済界との継続的対話の枠組み設置と共同での取り組み

最後に、大学と経済界が双方の要望や考え方について直接意見交換し、共通理解を深め、具体的行動に結びつけるための継続的な対話の枠組み設置を提案している。検討すべきテーマとしては「Society 5.0時代に産業界が求める人材」「大学教育への期待」「現状の新卒一括採用で期待される企業の取り組みと、中長期的な採用と大学の対応のあり方」などが考えられ、トップレベルでの会合の後、実務家から構成される作業部会で具体策を検討することを想定している。

【SDGs本部】