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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年1月17日 No.3392 遠藤金融庁長官から「今後の金融行政の方向性」について聞く -金融・資本市場委員会

遠藤長官

経団連は12月17日、東京・大手町の経団連会館で金融・資本市場委員会(國部毅委員長、林田英治委員長、日比野隆司委員長)を開催し、金融庁の遠藤俊英長官から、「今後の金融行政の方向性」について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 金融行政の改革

(1)金融行政の改革

20年前の金融庁発足時に掲げた「ルール重視の事後チェック行政」などを厳密に追求した結果、不良債権問題は2000年代半ばに収束をみた。他方で、同じ方針のもと検査・監督を機械的に続けた結果、時代の変化に伴ったさまざまな副作用が生じた。

例えば、銀行融資では、融資先企業の事業内容や将来性ではなく、担保・保証の有無などの形式が必要以上に重視されるようになった。これらも含めた形式・過去・部分への集中等の副作用を解消すべく、ルールベースからプリンシプルベースの検査・監督への転換に取り組んできた。

金融庁の役割は、金融機関が独自性を発揮しながら、市場で適正な競争を行うことができる環境を整備することである。顧客本位を基本に各金融機関の創意工夫を後押しするため、金融庁からも情報を発信し、金融機関によるディスクロージャーと相まってベストプラクティスの追求に向けた取り組みを促すことにした。

(2)金融庁の改革

金融行政の質を不断に向上させるため、金融庁では2つの改革を実施している。「少人数グループ化」では、双方向のコミュニケーションが活発に行われるよう、課室の下に5~10人程度のグループを設けた。また、「政策オープンラボ」では、若手も含む全職員による自主的な政策提案の枠組みを設けた。これらの取り組みや民間企業の好事例の導入などを通じ、金融庁の組織文化も変革させていくことを考えている。

■ 今事務年度の金融行政の重点施策

(1)デジタライゼーションの加速的な進展への対応

フィンテック(FinTech)をはじめとするデジタライゼーションの加速的な進展に対応するには、金融機関やベンチャー企業などの民間の動きに合わせ、行政も変わる必要があると認識している。

「金融行政のデジタル化」としては、例えば、RegTechエコシステムといわれるような官民双方にメリットがあるシステムの構築も視野にさまざまな可能性を模索していきたい。

また、デジタル化による技術革新のビジネスへの応用を後押しする取り組みとして設置しているFinTech Innovation Hubでは、職員が企業に出向き、フィンテックのイノベーションがどういうかたちで起きつつあるかを調査するとともに、企業に入り込み、議論も行って内容を適時に庁内で共有している。今事務年度で掲げたヒアリング100社の目標は達成した。

FinTechサポートデスクやFinTech実証実験ハブでは、フィンテック企業や金融機関等、民間の動きに応えるかたちで、相談対応や支援を行っている。

将来的には、フィンテックの進展により、さまざまな企業が金融機能を担うことになるので、銀行法等、現行の縦割りの法制度を、決済、資金供与等の機能に着目した機能別横断的法制に見直す必要があると考えている。

(2)家計の安定的な資産形成の推進

人生100年時代を迎えるなか、人生各ステージの需要に即した顧客本位の業務運営を定着させ、長期・積立・分散投資を推進する。2018年1月に開始したつみたてNISA制度について、安定的な資産形成を支援する制度として金融機関の協力で広く国民に均霑(きんてん)させていくほか、成功体験なども通し、国民の金融リテラシーを向上させていく必要がある。

【経済基盤本部】

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